司書は本など読まない!? 図書館のイメージを覆す一冊
『どうか、お静かに 公立図書館ウラ話』スコット・ダグラス 宮澤由江:訳
清野瑞帆さん(東京・渋谷教育学園渋谷高等学校)

作者のスコット・ダグラスさんは、図書館の司書です。司書になりたいと思ってから、実際になるまで、そして図書館での日々が書かれています。
司書が書いた本なんて絶対堅苦しいに違いないと、思いながら最初に目次を開きました。目次の第1章は「司書は本など読まない」。なんだって!?と思いますよね。でも、本当に司書は本を読まないという話から始まるので驚きました。
こんなに分厚いのにそう思わせない中身の面白さ。図書館司書としての対応や、おもしろいお客さんのエピソードは抱腹絶倒でした。途中でコラムも入っているので読みやすいです。私が一番好きなコラムから引用したいと思います。
「すいません、ちょっとおたずねしますけど、あなたを借りるにはどんなカードがいるのかしら?」
「VISA、Masterカードまたはアメリカンエキスプレス」
ではもうひとつ。
「司書にメロメロなの。それを克服するための本どこにあるか教えてくださる?」
「分類番号636.45MRCHです」
この分類番号はイタリア産の畜産牛豚に関する書籍です。
そして、アメリカの図書館ならではの話もあります。
彼が初出勤をした日は2001年9月11日。そう、ワールドトレードセンターに飛行機が突入した日です。彼はそれをニュースで見ながら朝食を食べ、コーヒーを飲み、ニュースキャスターの言う「我々の人生はまったく変わってしまった」という言葉を聞きながら出勤しました。
なんて普通の日常なのだろうって思いませんか。その日の図書館でのシーンを読みたいと思います。
――レポーターはこの国は永久に変わってしまうだろうと言っていた。でも僕はあの日そんなことは全然考えないでいた。続く8時間、僕は同じ2つの質問「ちょっと伺っていいですか?」「インターネットは使えますか?」の対応をし続けた。みんないつもと変わらぬ様子でメールをチェックし、ベストセラーを探していた。たぶん現実と向かい合いたくなかったんだろう。

こんなふうに、私たちからは、うかがえない本当の気持ちが書かれています。私は本書を読んで図書館がもっと好きになり、司書という仕事に対して親近感が湧きました。そして親しみが持てて前よりも司書の先生方と仲良く話せるようにもなりました。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>
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清野さんmini interview
きっかけ
小学生の頃から読書は好きでしたが、中学生になってファンタジーを面白く思えなくなり、本を読まなくなりました。しかし、高校1年の時に手に取った新書をきっかけに、再び読書の楽しさを思い出しました。いろいろな本を手に取ってみることって大事だなと思うようになりました。
小学生の頃
忍者モノやかっこいい女の子が戦う話が好きで、「忍剣花百姫伝」というシリーズや「忍者KIDS」というシリーズを読んでいました。たかしよいちさんの学習漫画も大好きでした。こちらは今の小学生にも読んでほしいと思います。