2回めのほうが泣ける!2回読まなければ真髄にはたどりつけない
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文
谷口朋さん(福井県立藤島高等学校1年)

帯に書かれた「泣ける」という文字に惹かれてこの本を手に取りました。そんなに泣けるのかと半信半疑で買ってみたのですが、泣けました。この物語は奇跡の運命で結ばれた二人の、切なく美しい恋愛小説です。
舞台は京都。美大生の高寿くんが電車で一目惚れした女の子愛美ちゃんに声をかけるところから始まります。その後二人は一緒に散歩をします。散歩の別れ際、高寿くんの「また会える?」という言葉に愛美ちゃんが突然泣き出します。その時はまだ、高寿くんにも読んでいた私にもその涙の理由はわかりませんでした。
そして二人は交際に至ります。付き合ってみると愛美ちゃんは、高寿くんが戸惑ってしまうほど完璧な女の子でした。また、愛美ちゃんはことあるごとに涙を流します。とても涙もろいんです。
私は初め読んでいて、愛美ちゃんはこういう子なんだなと受け止めていたのですが、実は愛美ちゃんが完璧なのにも泣き虫なのにも理由がありました。愛美ちゃんにはある大きな秘密があります。その秘密を高寿くんが知って、物語は切ないのに残酷、けれども美しいラストへと進んでいきます。
この本の醍醐味は2回読むというところにあります。むしろ2回読まなければこの本の真髄にはたどりつけません。1回目に読んだ時と、愛美ちゃんの秘密を知った上で2回目に読んだ時とでは見えてくる物語が180度違います。同じ文面なのに、です。
1回目は純粋な二人の幸せな日々が読んでいて微笑ましくなりましたが、2回目は愛美ちゃんの一つ一つの言動に胸がしめつけられ、涙せずにはいられませんでした。一番泣いたのは、最初の散歩の別れ際の場面です。1回目ではなく、2回目に読んだ時です。運命の二人が出会う、物語のはじまりの部分なのにどうして切ないのか。これは2回以上読んだ人にしか味わえない涙です。
気になる愛美ちゃんの秘密はここでは言いません。その秘密は想像をはるかに超えています。愛美ちゃんの秘密に想いをめぐらせながら読むのもこの本の楽しみの一つです。最大の手掛かりとなるのは、この題名と表紙の挿絵です。どちらも実に的確に愛美ちゃんの秘密を表現しています。

グリコの宣伝文句に『一粒で二度おいしい』というものがありますが、まさにこの本はその通りです。私は読んでいて、なにか魔法にかけられたような、不思議な気分になりました。
1回目と2回目で味が変わるマジックのような1冊、ぜひ手にとってご一読…いえ、ご二読してみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>