消えた男は人類の大量虐殺を計画しているのか?
『インフェルノ』ダン・ブラウン 越前敏弥:訳
大倉 響くん(三重県立桑名高等学校2年)

ダン・ブラウンの有名な著書『ダ・ヴィンチ・コード』と、本書は同じシリーズ。題名の『インフェルノ』には地獄という意味があります。表紙に描かれている男性は14世紀の詩人、ダンテという人物で、この人物が残した『神曲』という叙事詩の中に『地獄篇』というのがあります。この『地獄篇』がこの物語の大きなキーワードであるため、『インフェルノ』という題名がついています。
さて、世界の人口がこのまま増え続けていったら、いったい世界はどうなるでしょう。ちょっと不安を感じる質問ではないでしょうか。本書は、人口爆発や人口増加というのが大きなテーマとなっています。
実は、世界保健機関によると、世界の理想の人口は、40億人なのだそうです。現在、世界の人口は70億人を超えると言われています。もし人口が増え続けてしまえば、可能性として、資源がなくなっていく、生活用水がなくなっていくということが考えられるし、もしかすると人類が滅亡するかもしれません。
この作品の中に、一人の男が現れます。その男は世界保健機関に対して、このまま人口を増やし続けて人類滅亡を招くのか。このまま医療を発展させていっていいのか。そういうことを訴えるわけです。
しかし、現実的に考えて、「医療の発展をやめよう」なんて言ったら異常者扱いされてしまうでしょう。案の定、彼は異常者として扱われてしまいます。でも彼には大きな計画がありました。彼は、「この場所でこの日に世界は永遠に変わった」という一つのメッセージと、先ほど紹介したダンテの『地獄篇』を思わせる一節を残して消息を絶ってしまいます。
この男があのダンテの一節を使ったのには大きな理由がありました。ダンテが生きた時代にも人口が増えすぎてしまった。しかし、黒死病、つまりペストが流行って、ヨーロッパの人口の約3分の1が亡くなった、と言われています。けれども、この3分の1の死は無駄ではなかった。それは、増えすぎた人口から3分の1を間引いたことによって次の時代の扉を開いたからだ。そんなふうに言われているのです。
このダンテの一節を残した男、そして人口が増えすぎている現在…この2つから、この男が何をしようとしているのか、若干勘付いてきませんか。もしかして人類を大量虐殺して人類を間引こうとしているのではないか、という疑いが浮上するのです。
それを解決していくのが主人公のロバート・ラングドン教授。教授は、この物語を解くキーを一つ持っていました。それは、ダンテの『地獄篇』をモチーフに描かれた絵画を映し出すプロジェクター。そこには不可解なアルファベット10文字があり、それを解いていくのがこの物語のストーリーとなっています。

<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>
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大倉くんmini interview
好きなジャンル・作家
ジャンル・・・海外筆者のSF作品が一番好きです。
作家・・・特にはいないのですが、ダン・ブラウンさんの書く現実味あふれる作風には感動しました。日本の文豪では太宰治が好きです。
好きになった時期
小学校の頃、ハリーポッターを全て読んだことと、中学校の頃、ライトノベルを読んでみたことで、いろいろなジャンルの本と出会い、本が好きになっていました。
今後読みたい本
SF作品ばかり読んでいたので、この機会に恋愛ものとかも、いろいろ読んでみたいなと思います。