カラス研究一筋。人間味あふれるカラスの生態が楽しめる!
『カラスの教科書』松原始
齋藤千春くん(東京都立青山高等学校3年)

この本はカラスについてびっしり書かれています。まずカラスについての研究そのものが、あまりないんですね。そんな中で筆者の松原さんは、「誰も調べていないんだったら俺が調べてやろう」って、大学の卒業論文からずーっと20何年間か、カラスのことだけを調べている大変変わった人なんです。その松原さんが書いたカラスの本となったら、そりゃあもう面白くないわけがない。今回はカラスの面白くて愛嬌のあるところをピックアップして紹介したいと思います。
僕はカラスに対して怖いイメージを持っています。これまで道端で遭遇すると、不良に出会ったときのように肩をすぼめるくらいの対応しかできませんでした。
しかしこの本によると、実はカラスも人間のことを怖いと思っているのですが、しかし、人間がカラスを避けると、カラスは「あ、俺、人間より強いんだ!」と思って調子に乗るみたいです。そんなふうに調子に乗らせるわけにはいきません、霊長類代表として。ですから、カラスと遭ったら目を合わせてそのまま突き進んでいきましょう。そうすると「え!? こっちきた!」となって逃げていくはずです。
カラスは巣立ちが遅い鳥としても有名で、人間みたいにずーっと子どもと親が一緒に暮らしているそうです。人間でもニートだとかゆとり世代というのが話題に上がっていますが、カラス界でも同様で、なんと、雛が巣立たないことが問題になっているんです。
そのために親がどうするかと言うと、お父さんガラスが急にブチ切れて「カア~!」って怒るんですよ。そうすると雛ガラスは「え!? なんで急にお父さん怒ってるの?」となって、お母さんに助けを求めます。このへんはすごく人間っぽいところで、その間に挟まれたお母さんはお父さんの顏を立てつつ、子どもの身代わりになるんです。
どうすればカラスに襲われなくなるか、どうすればカラスにゴミ箱を荒らされなくてすむか、というようなカラスの取り扱い説明書、カラス対策書みたいなことも書かれています。この中で私が一番面白いと思ったのは、カラスの鳴き声に関するところです。カラスは鳴き声を真似する性質があり、「チーン!」となったら「チーン!」と鳴くそうなんです。これは僕も驚きました。さらに、カラスは「カアカア」と鳴くことが多いのですが、「カアカアカアカア」と速いテンポで鳴いているときはちょっと気が立っているとき、一番怒っているときは「コラー!」と聞こえるそうです。これは僕も聞いたことがないのですが、カラスの大研究者が言っていることなので、今後は耳をそばだてて聞いてみたいと思います。

<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>