自由奔放で超個性的な彼女と、ごく普通の彼氏。恋の行方は?
『スターガール』ジェリー・スピネッリ 訳:千葉茂樹
内藤百合子さん(埼玉・星野高等学校1年)

恋をしたことはありますか。私は今、星野高校の女子部にいるので、時々「教室に男子がいたらいいな」なんて思うこともあります。私が紹介する本は、アメリカのハイスクールを舞台に、主人公スターガールとレオの恋が描かれています。
スターガールの本名は、スーザン・キャラウェイ。しかし彼女は、名前というものは服と同じように自分に合わせて変えるものだと考えているので、自分でスターガールとつけ直しました。こんなふうに彼女は、普通とはちょっと違う女の子なのです。
スターガールが新学期、マイカ・ハイスクールに転校してきたとき、ハイスクールは大混乱になりました。ちょっと想像してみてください。教室の自分の机に花を飾ったりカーテンをつけたり、そして、いつもウクレレとペットのネズミを連れているんです。昼休みには食堂で歌ったりもします。こんな転校生が来たら、誰だって驚きます。
新学期当初、スターガールは学校の人気者になりました。みんなが彼女に話しかけ、なかにはまねをするような人まで出てきました。でも、そんな時間は長くは続きませんでした。彼女のとったある行動がきっかけで、スターガールは学校中のみんなから無視されるようになってしまったのです。
レオは、そんなスターガールに恋をしました。二人は本当に愛し合っていました。砂漠でずっと語り合ったり、スターガールのペットのネズミのシナモンと遊んだり、とてもすてきな時間を過ごしていました。でも、レオは普通の男子高校生です。まわりのみんなをとるか、スターガールをとるかという問いが彼にのしかかりました。
私たちは日常生活でまわりと合わせることが、多かれ少なかれあると思います。私も学校でまわりの空気を読んだり、人に合わせたりということはたくさんあります。でも、合わせることに疲れることも、誰にだってあるのではないでしょうか。私は、そんなときにこの本を読んでもらいたいと思っています。誰よりも自由なスターガールの生き方は、私たちにいろいろなことを考えさせてくれるはずです。
さて、この本には続編『ラブ、スターガール』があります。第1巻の『スターガール』はすべてがレオの視点から描かれているのですが、続編『ラブ、スターガール』はすべてがスターガールの視点から描かれています。彼女の不思議な行動の理由や、二人の恋の秘密が明かされます。興味を持ってくださった方は、ぜひ2冊セットで手に取ってください。両方を読んで、はじめてこの本は完結するのです。
もし、自分のまわりにスターガールみたいな子がいたら、私はどうするだろうかと、この2冊の本を読んで考えました。まわりに合わせがちな私は、もしかしたら彼女を孤立させてしまうかもしれません。でも、スターガールはどんなときも自分らしく、自由に生きています。そんな人たちの心の優しさや純粋さに、私たちは気づくことができるでしょうか。
切ない恋の物語でありながら、いろいろなことを考えさせてくれるこの本。じっくりと味わって、自由ということ、生きていくということについて考えてみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 埼玉大会の発表より>
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