東西分裂で大切な人と生き別れに。山田作品では珍しい感動系
『ニホンブンレツ』山田悠介
佐藤竜大くん(群馬・東京農業大学第二高等学校)

今回紹介するのは山田悠介さんの本です。山田悠介と聞くと『リアル鬼ごっこ』を思い起こしませんか。『リアル鬼ごっこ』といえば、全国の佐藤を殺すというストーリー。僕の名前は、あの「佐藤」なんです(笑)。山田悠介の作品には、こうした残酷な作品が多いと思いますが、紹介する『ニホンブンレツ』は、感動系の作品です。
舞台は近未来の日本で、考え方の違いで対立を深めていた東と西がある日、「お前らとは意見が合わない!」と言って東西に大きな壁を作ってしまいます。日本が分裂してしまうのです。まるで、ベルリンの壁ですね。
その時点で東にいる人は東での生活、西にいる人は西で生活をすることを余儀なくされます。東西の行き来をすることも許されず、連絡を取ることさえも決して許されません。万が一、そのような行為をすれば、その人は公開処刑となってしまいます。残酷な世の中が描かれています。
そんな絶望的な世の中で、主人公の博文は小学校の教師をしていて、東の小学校で生徒に教えていました。そんな中、東西分断によって、将来を約束していた恋人の恵美と生き別れになってしまいます。会うことも連絡を取ることもできません。
あなたなら、どうしますか。大切な人と生き別れになってしまった場合、あなたならどういう行動をとりますか。僕は、西に向かいます。

東西を行き来しただけで公開処刑されてしまうような残酷な世の中で、主人公は恋人に会うために西への潜入を計画します。西に潜入した博文は、そこで驚きの光景を目にします。そして、無事に彼女に会うことに成功します。その潜入場面はスリルがあってハラハラドキドキする場面ばかりなので、とても見どころがあります。場面展開がとても早いので読みやすい作品になっていると思います。
普段の日常が平和なことにありがたみが感じられたり、大切な人をより一層、大切に思えたりできるような作品になっています。
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<全国高等学校ビブリオバトル関東大会の発表より>
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佐藤さんmini interview
好きなのは
感動作品やホラー、ミステリー系が好きで、好きな作家は山田悠介さんです。
これから読みたいのは
いつも読んでいる作家ばかりでなく、いろんな作家のホラー、サスペンス系の本を読みたいです。