パスタを食べてイタリアを統一しよう!
『パスタでたどるイタリア史』池上俊一
鈴木杏さん(千葉県立柏中央高等学校1年)

イタリアはかつて統一されておらず、いくつかの国に分割されていました。さらに国土全体が山などで分かれ、地方ごとに歴史、風土、気候が大きく異なります。そのためイタリアの地方色はかなり強いとよく言われています。パスタも例外ではありません。イタリア南部のプーリア州では耳たぶの形をしたオレッキエッテというパスタが有名です。ナポリではミートソースと合わせて食べる穴あきパスタのツイティなどなど、地方ごとにそれぞれの特産物を用いたパスタ料理や、形の異なるパスタがあります。
このパスタは実はイタリア統一という歴史的な出来事とも深く関わっているのです。イタリアが統一されたのは1870年頃。日本の明治初期のことです。イタリアはかつてスペインやオーストリアなど多くの国の支配下にありました。そのため、やっと国が統一されたからといって今まで他国の支配を受けてきた国民たちは、なかなかまとまることができません。国が統一されたから次は国民を統合せねばならない。「イタリア人」を作らなくてはいけないのです。イタリア統一に大きく貢献した軍人ガリバルディは「諸君、マッケローニこそイタリアを統一するものになるであろう」と言っています。マッケローニというのはパスタのことです。実際、マッケローニはイタリアの国民統合に対して大きな効果を上げたのです。
パスタを用いた国民統合に一役買った人物がイタリア料理の父、アルトゥージです。アルトゥージは各地方の料理のレシピを収集し、整え、一冊のレシピ本としてまとめました。そこにはスパゲッティーのトマトソースがけやジャガイモのニョッキ、その他イタリアの定番パスタが載せられ、イタリアの国民的料理としてイタリア国民に広く知られたのです。
この「同じパスタを作って食べる」ことがイタリア全土に広まり、初めてイタリア国民は体から、内面から統合され国家統一は促されたのです。パスタを作ったイタリア人もまた、パスタによって作られたのです。
今やパスタは世界中で食べられており、私たちにとても身近な存在です。このパスタが大きな歴史の動きと結び付いている。とてもすごいことですよね。こんなにも国の歴史、政治にまで関わってくる食べ物はなかなかありません。パスタのカラー写真もいっぱい載っています。イタリアにあまり興味がない人でも、本書を読めばイタリアが好きになります。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 関東大会の発表より>
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