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「君主論」を読んで新聞部を全国大会へ!

『マキャベリ「君主論」』武田好

竹添そらさん(福岡大学附属大濠高等学校2年)

『マキャベリ「君主論」』(NHK出版)
『マキャベリ「君主論」』(NHK出版)

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という本は、何年か前のベストセラーです。高校の野球部の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』という経営の本をマネージャーのハウツー本だと勘違いをして読み、その本を基に自分の学校の野球部を甲子園まで導くという話です。

 

この『もしドラ』のシチュエーションと、私と『マキャベリ「君主論」』との出会いのシチュエーションはちょっと似ています。

 

私は新聞部に所属しています。昨年の春休みに私の母方の実家がある長崎に帰った時に、「私、高校2年生になって新聞部にも後輩が入って、ちゃんと先輩できるか心配だなぁ」と話していたら、おじいちゃんがいきなり立ち上がって自分の書斎から一冊の本を持ってきました。「先輩たるものこれを読みなさい」と渡されたのが、『マキャベリ「君主論」』です。

 

このマキャベリさんはざっと500年前くらいのイタリアの外交官で、「理想とする君主、王様というのはこういう人のことですよ」というのをまとめたのが、この君主論になります。

 

もう共通点はおわかりでしょうか。たかだか「先輩になるのが不安」と嘆いている女子高生に対して、君主とは何ぞや、王とは何ぞやと書かれた『君主論』を渡すって、なんでやねんて思いませんか。

 

私もその当時は「なんでやねん」ってなったのですが、おじいちゃんの好意を無下にするわけにもいかず、その場は「ありがとう」と言って借りて、後日がんばって読みました。そうしたら意外と、たかが女子高生な私でもためになるなと日常に下りてくるものがありました。その中でも私が感銘を特に受けた箇所を紹介します。

 

この『君主論』の中には「人間には三つの頭がある」と書かれています。その三つの頭のうち、君主たる素質がある二つをご紹介します。

 

自分が独力で考えを巡らせる頭。

他人に考えさせてその善し悪しを判断する頭。

 

君主ということはリーダーシップを取れるということですから、私だったらどちらになれるかなと考えてみました。

 

まず、第一の頭、「自分が独力で考えを巡らせる頭」というのは、たくさんある問題に対して全て自分で正しい答えを導き出せる。要はカリスマ性を生まれた時から持っているような人のことをいうのかなと私は考えました。残念ながら私はカリスマ性は持ち合わせていません。

 

ですから私が目指したのは第二の頭です。「他人に考えさせてその善し悪しを判断する頭」。たくさんある問題に対して一人では解決できない。先輩や後輩、同級生などに相談を持ちかけて意見をたくさんもらって、その集約をしてより良い答えを導き出す。要は人の意見をちゃんと聞ける人間になろうと、この本を読んで行動している真っ最中です。

 

竹添そらさん
竹添そらさん

『もしドラ』の主人公がドラッカーの『マネジメント』を読んで甲子園に連れていったというのなら、私はこの『マキャベリ「君主論」』を読んで我が新聞部を全国大会に導くぞ!という意気込みで頑張っています。本気ですよ?

 

実際この本を参考にして私がいい先輩になっているかどうかは後輩に聞いてみないとわからないのですが、少なくとも私はためになりました。堅苦しいイメージが先行するかと思いますが、こんな女子高生でも読めました。ぜひこの機会に御一読ください。

 

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>

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好きなジャンル・作家

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小学生の頃

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2015年印象に残った本

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今後読みたい本

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