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時間に縛られ、仕事や勉強に縛られた現代人へのメッセージ

『モモ』ミヒャエル・エンデ 大島かおり:訳

中山真季さん(千葉・二松学舎大学附属柏高等学校)

『モモ』(岩波書店)
『モモ』(岩波書店)

もし時間を奪われてしまったら、どうしますか。1日24時間が1日10時間になってしまったら、みなさんは何を削り生活していくのでしょう。睡眠時間? 食事の時間? 入浴時間? 今回紹介する本は、まさに時間を奪われてしまったある街の話です。

 

表紙には、「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間に取りかえしてくれた女の子の不思議な物語」と書いてあります。その女の子は「モモ」です。

 

モモはある平和な街にふらりと現れました。見た目はボロボロ。髪の毛はボサボサで男物のボロボロのコートを着ている。足には、サイズに合わない靴を履いていました。モモは、コロシアムの形に似た劇場の隅で生活していました。最初、街の人は、モモを見た瞬間に嫌悪を表し、モモを避けていました。

 

しかしモモと話してみれば、モモは不思議な少女であるということがわかったのです。モモは人の話を聞く時に、ただ目を見てうなずくだけなのに、話をする人たちの心の中にあるわだかまりを自然とほどいていくことができる、聞き上手な少女だったのです。普通の人にはできませんね。そんな不思議な少女、モモが来たことにより、平和だった街はもっと平和になりました。

 

そんな時、灰色の男たちと呼ばれる男たちが現れました。その名の通り、頭から爪先まで、持っている葉巻から出る煙さえも全てが灰色に覆われていました。その男たちは街の人たちみんなを言葉巧みに操り、時間を奪っていったのです。時間を奪われた人たちは次第にしゃべる時間をなくし、仕事一点に集中させ、家族との関係を断ち切り、自分一人の時間を優先させるようになりました。男たちが現れたことにより、平和だった街は喧噪の絶えない街に変わってしまったのです。

 

モモは一人、危機感を覚え、立ち向かいます。モモは、カシオペアという、甲羅に文字を浮かべる不思議な亀に出会います。その亀に導かれ、マイスター・ホラという人物のもとで、時間の大切さ、必要なものは何なのか、どうすれば灰色の男たちを街から追い出すことができるのかを教わります。モモは、街に戻り、人々を救いに行きます。

 

中山真季さん
中山真季さん

この本の訳者、大島かおりさんは、あとがきで、「これは現代社会のことなのではないか」と言っています。私もそうだと思いました。今の私たちは時間に縛られ、勉強、仕事に縛られ、必要以上に人との話をしなくなっています。さて、この本の中に、それに対する解決策はあるのでしょうか。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 関東大会の発表より>