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教師を内心ばかにすべし。でもそこにはちゃんと理由がある

『不道徳教育講座』三島由紀夫

中島恵理さん(東京・共立女子第二高等学校2年)

『不道徳教育講座』(角川文庫)
『不道徳教育講座』(角川文庫)

「うそをついてはいけません」「友人を裏切ってはいけません」「弱い者には手を差し伸べなさい」「人の恩は忘れてはいけません」ということを、私たちは、小中学校時代、道徳の時間などに教え込まれたと思います。そうした道徳に真っ向から勝負を挑んでいるのが、三島由紀夫先生が書かれた『不道徳教育講座』。

 

例えば、「大いにうそをつくべし」「友人を裏切るべし」「弱き者をいじめるべし」「人の恩を忘れるべし」。人として大丈夫かなと思ってしまいますね。

 

中でもすごいなと思ったのが、「教師を内心ばかにすべし」。

 

「学校の先生を内心ばかにしないような生徒にろくな生徒はいない。教師を内心ばかにしないような生徒は決して偉くはない。こう私は断言します。」

 

「弱い者いじめをするべし」というところでは、大嫌いな太宰治の悪口をバンバン書いた話が載っています。こういうもの書いていいのかなって思ったのですが、案の定、クレームの手紙どっさり来てしまいます。しかし、彼はなんと、それをエッセーのネタにしているのです。

 

中島恵理さん
中島恵理さん

そんなふうに本当に爆笑できるんですが、深く考えさせられるエッセー集でもあります。例えば、「大いにうそをつくべし」と言うのは、なぜなのか。それに至る理由は深い。ああそういう考え方もあるんだ、と納得したり、ためになったりするものもあります。例えば、「告白するなかれ」。告白するというのは、告白される相手もいて、その相手を気遣わないといけないんだなと思ったりしました。

 

このエッセーが実生活の考え方に影響するかどうかは人によりけりですが、私はちょっと影響を受けてしまいました。人生は楽しくなりましたよ。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 関東大会の発表より>

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中島さんmini interview

好きなのは

ジャンルは、ファンタジー、ミステリー。好きな作家は、星新一、米澤穂信、太宰治、桜庭一樹。

 


小学生の頃

本を読むことは昔は嫌いでしたが、『マジック・ツリーハウス』シリーズを読んで読書が好きになりました。最初は『マジック・ツリーハウス』シリーズだけしか読んでいなかったのですが、親に勧められた、星新一の『ボッコちゃん』を何度も読み返すほど好きになりました。1つの話が2-3ページなので、本が苦手なことを克服したい人におすすめです。

 


影響本

中学3年の時に読んだ『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス)の影響で心理学や知的障害に興味を持つようになりました。また、小学6年の時に読んだ『ライトノベルを書きたい人の本』(成美堂出版)に書かれていた「作家になるにはいろいろなことに興味を向けなければならない」という一文の影響で、とても狭かった興味の幅が広がりました。


印象に残った映画2015

『フォレスト・ガンプ』を見ました。様々な社会問題が混ざっており、たった1本の映画にこれだけのものが詰め込まれていることに驚きました。ですが、堅苦しくはなく、笑ってしまう箇所がいくつもあります。

 

 


これから

『新世界より』(貴志祐介)、『GOSICK』シリーズ(桜庭一樹)、『フロイト入門』(中山元)や、米澤穂信、星新一、江戸川乱歩、アルフレッド・アドラーの本が読みたいです。