自分を認められれば、相手の相手らしさも認められる
『五体不満足』乙武洋匡
増田莉子さん(三重県立津高等学校)

実は、私は、右足の踵に骨嚢腫(こつのうしゅ)という病気を抱えています。足の中に穴が開いていてとても骨折しやすいんです。そんな私が好きな教科は体育。びっくりするかもしれませんが、私は体育がすごく好きなんです。今回、体育で、ハードル走かマット運動かを選択することになり、私はハードル走を選びました。やりたかったからです。みんなと一緒のことはできなくても、自分で工夫して回数を減らしたりすることでできると思って選びました。
それに部活は剣道部です。踏み込み足は「パーン」と踏み込むので、すごく踵に衝撃が加わるですが、工夫してそれも挑戦しています。
『五体不満足』に出会ったのは、私の骨嚢腫という病気が発覚してからでした。「どうしよう、私、体育好きなのにもうできない」…そう思った時に出会ったのです。
筆者の乙武洋匡さんは、手も足もない先天性四肢切断で生まれてこられました。私が一番印象に残った部分を紹介します。
――自分の存在を認められるようになれば、自然に目の前にいる相手の相手らしさを認めることができるようになるはずだ。自分もたった一人の自分であるように、この人もたった一人しかいない大切な存在なのだと。
そうなんです。一人ひとり個性があっていいんじゃないでしょうか。私の一つの個性として足の踵の骨嚢腫という病気があります。そして乙武さんの個性として、手と足がないという病気があると思います。この本を読んで「かわいそう」の概念が変わりました。

私は昨日マレーシアの留学生の方と英語でお話したのですが、壁があるという印象は受けませんでした。同じ人間なんです。壁を取り去って、同じ人間として助け合いながら生きていこうと思いませんか。乙武さんが小さいとき、クラスのみんなは「乙ちゃんルール」というものを作り、野球もサッカーも一緒に楽しんだそうです。
自分の視点を変えることができる本です。ぜひ、読んでみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 三重大会の発表より>
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『精霊の守り人』
上橋菜穂子(新潮文庫刊)
バルサが用心棒として旅を続ける中で、様々な経験を重ねていくところが楽しめる作品です。国同士がからみ合いながら進んでいくストーリーにはまりました。
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増田さんmini interview
好きなのは
ファンタジーが好きです。作家は上橋菜穂子さんが好きです。
本が好きになったきっかけ・・・
小学校低学年の時に森鷗外の『舞姫』を読んで、内容は難しかったですが、文章の美しさや心の動きの描写に感動したのが、本を好きになったきっかけです。
小学校の時
『魔女の宅急便』が好きでした。映画が好きだったので、本屋で原作を見つけた時はとても嬉しく、全巻買って1週間かけて読みました。
影響を受けた本
『スタンフォードの人生を変える教室』ケリー・マクゴニガル
自分が意思力が弱いと思っていた時に、それが逆効果であるとことを教えてくれました。
2015年印象に残った本
『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介
介護に対する視線や視点が変わる一冊でした。じりじりとした孫と祖父の攻防戦が面白かったです。
今後読みたい本
伊坂幸太郎、村上春樹の本が読みたいです。ミステリーをもっと読みたいと思います。