椅子の中に男が潜んでいる!醜い男の恋の話
『人間椅子』江戸川乱歩
武島麗海さん(沖縄県立豊見城高等学校3年)

次のページが読みたくなくなるようなブラックな本を持ってきてしまいました。
表紙がおどろおどろしいものが多いので、表紙だけでも明るくしようと思い白紙で包んできました。題名は『人間椅子』。母に題名を書いてもらいました。
作者の江戸川乱歩さんが亡くなったのが1965年。昨年が没後50年で、いろいろな出版社が本を出しています。ですから表紙もグロテスクなやつからお花の柄、「本の内容と全然違いますよ」みたいな表紙まであるので、みなさんで探してみてください。
私は、沖縄県に住んでいますが、ちょっと調子に乗りまして、1カ月と1日、福岡に母の許可もなく旅してきました。本当は10日くらいで帰る予定だったんですが…。そのとき、先輩の家で『乱歩奇譚』というアニメを観て、「キツイ。一回小説で読んでみよう」と、先輩に買わせたのがこの本です。
この本には8つの短編が入っています。『押絵と旅する男』という物語があります。沖縄には電車がないので、私は電車に乗ったことがなかったんですが、電車の描写を読んで「電車乗れんわ」と思いました。「電車って相乗りってあるの? すげぇ。ボックス席ですか? なんですかそれ?」みたいな文化の違いを感じまして…。
『人間椅子』という短編は、最初想像したときに「人間が空気椅子になっている?」と思って読み始めました。けれども、実際は違っていて、椅子の中に人間が、しかもおっさんが、しかも醜い、超気持ち悪い醜い男が中に潜んでいるんです。
想像してみてください。今みなさんが座っている椅子の中に、「あーいい匂いだ、いい匂いだ」と思いながら入っている人がいて、「あなたのぬくもりはあどけない、あなたの体重は…重たい」みたいな感じで動いているんです。その話を読んで「うわ、変態!」みないに思ったんですよね。
実はこの人、恋しているんです。「僕、あなたの椅子の中に実は住んでいまして…お手紙ちょっと置きますね」みたいな感じでお手紙が届いたのがきっかけで、この物語が始まっていきます。
「僕、あなたに座ってもらってこんなに興奮して…」みたいな内容でして、結局「会っていただけないでしょうか」ということになり、最後には「奥さん、会ってくさい!」と…。
「撫子、あなたの撫子の花にハンカチを置いてください。」と書きます。その撫子の花言葉が「純愛・情熱的な恋」です。これは恋話です。気持ちの悪い恋話です。

中学、高校で太宰治の『人間失格』や夏目漱石の『こころ』を読みますよね。あんな感じで、人間のどす黒いところがすごく書かれているので、おすすめします。500円ぐらいの本ですが、沖縄県からここ東京まで持ってくるくらい価値がある本です。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>