動物行動展示がヒットの動物園が教えてくれる、動物の新たな一面
『僕が旭山動物園で出会った動物たちの子育て』小菅正夫
熊谷祐貴子さん(東京・八王子学園八王子高等学校)

旭山動物園には、かつて来場者の減少により、閉園の危機という暗い過去がありました。そこで立ち上がったのが前園長であり、この本の筆者である小菅正夫さんです。今や冬の名物であるペンギンの散歩や、動物の行動を間近で見ることができる、いわゆる動物行動展示という案が大ヒットし、今の旭山動物園へと生まれ変わりました。
この本には私たちの身近なよく知っている動物が数多く載っています。しかしこの本を読むことで、さらに新しい一面を知ることができます。
例えばハツカネズミは一般的な動物と同じで母親が子育てをします。小菅さんは幼少期にハツカネズミを飼っていました。そのハツカネズミに赤ちゃんが生まれたのですが、幼かった小菅さんは、赤ちゃんをのぞいてしまいます。すると、お母さんが実の我が子を食べてしまいました。自然界ではよくあることなのだそうです。どうしてお母さんネズミは食べてしまったのか。その答えはこの本にあります。
私が感動した動物のエピソードをもう一つ紹介します。旭山動物園に一組のオランウータンの夫婦がおりました。そこに一匹の赤ちゃんが生まれたのですが、その赤ちゃんは最初お母さんから育児放棄をされてしまいます。飼育員さんが一生懸命お母さんオランウータンに赤ちゃんを見せても知らんぷり。赤ちゃんの運命はどうなるのか。なぜ母親は育児放棄をしてしまうのか。その答えを知るのもこの本です。
私がこの本から学んだことは、試行錯誤をすれば必ず自分の納得する結果が得られるということです。飼育員さんたちの試行錯誤の中、死んでしまった動物や無事成長することができた赤ちゃんなどたくさんのエピソードが載っています。

<全国高等学校ビブリオバトル2015 関東大会の発表より>
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『太陽を抱く月』
チョン・ウングォル(新書館)
韓国文学の翻訳ですが、その物語の時代の口調に合わせて丁寧に翻訳されています。物語は中世のものではありますが、ミステリーとロマンスがあり、繰り返し読んでみたくなります。過酷な運命に負けないで前向きに生きる主人公に元気をもらいます。
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『一瞬の風になれ』
佐藤多佳子(講談社文庫)
この本を読み終わった頃には陸上競技の醍醐味を知ることができます。思春期を迎え、悩みを抱える登場人物を応援したくなり、自分との戦いの重要さと、一丸になって目標に突き進む仲間の大切さを感じます。
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『鹿男あをによし』
万城目学(幻冬舎文庫)
この本は、日本の昔からの伝統を感じ、人と生き物の共生の大切さ、難しさ、楽しさなど現実にありそうでなさそうな大きなスケールを楽しめます。想像しながら読むことで少し怖い点もありますが、だからこそ生まれるワクワクドキドキ感を感じ、一気に読みたくなる一冊です。
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熊谷さんmini interview
好きなジャンル・作家
好きなジャンルは生き物が登場するもの、現実味があるもの。
好きな作家さんは、乙武洋匡さん、あさのあつこさん、アレックス・シアラーさん、チョン・ウングォルさん。
本が好きになったきっかけ
本を読むことが好きになった時期は、小学校5年生の頃。それまで私は運動する事が大好きで、じっとして本を読むことは好きではありませんでした。きっかけとなったのは、『チェスト!』(作:登坂恵里香)です。この本に出会えたから、今本を読む楽しさを知り、本を読んでいます。
2015年印象に残った本
『永遠の0』(作:百田尚樹)。終戦70周年のこの夏、戦争を舞台に描かれているこの本を読み、自分の戦争の知らなさを痛感しました。
『スターウォーズ』 以前スターウォーズのテーマ曲をピアノで連弾し、1から全て物語を見たらはまりました。BB8の可愛さとダース・ベイダーの過去に魅了されました。
これから読みたい本
『下町ロケット』作:池井戸潤
『海賊と呼ばれた男』作:百田尚樹