同級生の死体発見からはじまる謎に包まれた夏休み
『向日葵の咲かない夏』道尾秀介
宮薗麗菜さん(長崎・聖和女子学院高等学校2年)

「いろいろがんばってたけど、おじいさん甘いよ。物語を作るならもっと本気でやらなくちゃ」。これはこれから紹介する本のなかで、小学4年生の男の子が言ったセリフです。最初にこのセリフを見たときにゾクゾクっとしました。
道尾秀介さんの『向日葵の咲かない夏』は、向日葵や夏といった単語と爽やかな表紙から受ける印象で、はじめは青春ものとか明るい話かと思いました。しかし読み進めてみると第一印象と全然違って、それがまた面白いと感じたのです。
主人公のミチオは3歳になる妹ミカと暮らす小学4年生です。ミチオが住む町では犬や猫を殺し、足の骨を折り、口の中に石鹸を押し込むという事件が起こっていました。怖いですよね。
そして明日から夏休みという終業式の日、ミチオは先生に頼まれて休んでいたSくんのもとを訪れます。ミチオはSくんの家の呼び鈴を鳴らすのですが、Sくんは出てきません。裏庭にまわってみると、キイーキイーという甲高い音が聞こえてきました。どうやら家の中から聞こえてくるので、そっとのぞきこんでみるとSくんがいました。「ああ、Sくん、いるじゃないか。何してるの?」声をかけてみましたが返事が返ってきません。しかもSくんの体は不自然に曲がっています。顏のほうを見てみると首が異様に長く、そして足のほうに目を落とすと、足が床についていません。そこにいたのは首つり自殺をしたSくんでした。

その後、先生と警察がSくんの家に行くのですが、死体がありません。そしてなぜかミチオの前に蜘蛛になったSくんが現れます。不思議な話ですよね。そこからSくんの死体を探すストーリーが始まります。この本は謎がとにかく多いです。その謎を早く解きたくて読み進めていきます。みなさんもぜひ読んでみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル長崎県大会の発表より>