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顔に大きな痣のある高校生の、初恋ゲームの行方は?

『君が電話をかけていた場所』三秋 縋

小川倭謹子さん(三重・皇學館高等学校2年

『君が電話をかけていた場所』(メディアワークス文庫/KADOKAWA)
『君が電話をかけていた場所』(メディアワークス文庫/KADOKAWA)

主人公・深町くんには、忘れられない夏の思い出があります。深町くんは生まれつき顔の右半分に大きな痣があり、友人をつくるのが苦手。高校生になってからもあまり友人がいませんでしたが、1年生の夏に、あるゲームに半強制的に参加をさせられることに。そのゲームとは、初恋を実らせるゲーム。このゲームに参加している間、深町くんの顔の痣は消え、「もし君がこのゲームで勝つことができたら君の顔の痣を一生消してあげる。でももし君がこのゲームで負けた時、君の魂をいただこう」…そう言われたのです。

 

深町くんはこのゲームで勝利するため、初恋の相手の初鹿野という少女と再会を果たしました。すると驚いたことに、初鹿野の顔にはまるで深町くんの顔の痣をそのまま貼り付けたかのような、大きな痣があったのです。この後、深町くんと初鹿野はどんどん仲が良くなっていきます。深町くんの友人の男の子と女の子も合わせて4人で夜天体観測へ行ったり、遊びに行ったり。

 

しかしある日、友人の女の子と初鹿野が自殺をしてしまうんです。初鹿野は何とか一命をとりとめたものの、記憶を失っていました。どうして2人は自殺をしようと思ったのか。深町くんは初鹿野の過去を調べ始めます。すると、初鹿野が中学生の時、どこで何をしていたのかまったくわからない空白の4日間というものがありました。この4日間が、のちにゲームに大きく関係してきます。深町くんは無事、この空白の4日間の謎を解決してゲームに勝つことができるのでしょうか。

 

この物語は『人魚姫』をモチーフにして描かれています。人魚姫は最後は、泡になって死んでしまいます。ほかの童話のお姫様だったら、大概幸せになれますよね。でも、人魚姫が持っていた選択肢はたったの三つだけでした。王子様との恋を実らせるか、もしくは王子様を殺して人魚として生きるか、もしくは自分自身泡となって死んでしまうか…。もう少し選択肢があってもいいのでは、と思ったんです。

 

深町くんはその三つの選択肢以外の行動を起こしました。それによって、深町くんの物語がどのように変わっていくのでしょうか。

 

この本のタイトルである『君が電話をかけていた場所』。そして下巻は『僕が電話をかけていた場所』。

 

これら二つのタイトルに出てくる「君」「僕」「電話」…これらの三つのキーワードはこの物語の中でとっても大切です。そこにも注目しながら読んでいただけると、より一層楽しめると思います。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 三重大会の発表より>

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好きなジャンル・作家

SFなら綾崎隼、群集劇なら入間人間、恋愛ものなら辻村深月の作品です。


今後読みたい本

これからも、今までと変わず、SFや群集劇などいろいろな作家の小説を読みたいなと思います。