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始まりはクラスメイトの日記「共病文庫」。予想を超える結末

『君の膵臓を食べたい』住野よる

金子愛美さん(三重県立四日市農芸高等学校3年)

『君の膵臓を食べたい』(双葉社)
『君の膵臓を食べたい』(双葉社)

タイトルを見て、びっくりする人も多いと思います。「えっ、膵臓食べるって何?」と。でも、読んでみると違うんです。この本は、「生きる」ということがすーっと心に沁み込んでくる、そんな本です。

 

登場する重要な人物は二人。暗くて人とはあまり関わることをせず、クラスにいても本ばかり読んでいるような男の子と、明るくて元気でクラスの人気者な女の子、山内咲良。物語はこの二人が出会うところから始まります。

 

僕は学校を休んで、以前行なった手術の抜糸のために病院を訪れていた。ロビーで待っていると、ふと目の前に一冊の単行本。僕は気になってその単行本を手に取った。本屋さんのカバーを外してみると、そこにはいつも見慣れている本のカバーはなく、本の本体に「共病文庫」と書かれた文字。なんだろうと思って中を覗いてみると、○月○日、今日私は膵臓の病気にかかった。あと数年で死んでしまう。このことは誰にも言わない。という、誰かの日記が書いてあった。僕は思わず固まってしまう。膵臓? 病気? 死ぬ? そこで僕に声を掛けた人物がいた。「あの…」。その声には聞き覚えがある。振り返ってみると、やはりクラスの山内咲良だった。

 

二人がどうなっていくのかがこの物語の見所です。ポイントは3つ。

 

1つ目は、先程出てきた「共病文庫」という山内咲良の日記です。この日記は後でとっても大切な役割を持ちます。

 

2つ目、謎が多く、地名も出てこない。主人公の名前もラスト20ページまで出てこない。今主人公たちはどこにいるのかもさっぱりわからない。謎だらけです。

 

主人公の名前はどう呼ばれているのかというと、その時主人公に関わったみんなの目線です。仲良しくん、大人しいクラスメイトくん、秘密を分かち合えるクラスメイトくん、そんな名前で呼ばれるんです。なぜ、そのように呼ばれているかは、読み終わった後に理解していただけると思います。

 

そして3つ目のポイント。ラスト60ページから始まる、すべてをひっくり返したような結末。ラストを予想する人はたくさんいると思いますが、その想像したラストは訪れません。私自身も、想像したラストとはあまりにも違いすぎて「えっ嘘でしょ」となりました。

 

これがデビュー作とは思えない作品です。私は4回読みなおしました。それくらいとてもいい話で、読み終わった後に、家族に、大切な友達に、大切な人に会いに行きたくなるような本です。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 三重大会の発表より>

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金子さんmini interview

本を好きになった時期

小学校3年生くらいの頃、朝読の本を探していた時にたまたまロアルド・ダールさんの『魔女がいっぱい』を読んで、小説の面白さを知りました。『魔女がいっぱい』は魔女にネズミにされた少年の戦いの話。他に、『マチルダは小さな大天才』という、5才の天才少女の物語も読みました。

 


好きなジャンル、作家

ミステリー系、ファンタジー系の本が好きです。好きな作家は米澤穂信、山田悠介、ロアルド・ダール。

 


今後読みたい本

結末が衝撃的なミステリーが読みたいです。また、住野よるさんの次回作が出たら読んでみたいです。