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和菓子一つひとつの物語に触れ、さらに食べたくなる

『和菓子のアン』坂本司

河野亜美さん(三重県立松阪高等学校2年)

『和菓子のアン』(光文社)
『和菓子のアン』(光文社)

主人公の梅本さんは、デパ地下にある和菓子店でアルバイトしています。和菓子店の店長さんはとても美人で仕事ができますが、とてもギャンブルが好きで中身がおじさん。一方、同僚の橘さんは、イケメンなのに中身が乙女です。こうした登場人物のキャラクターの濃さが魅力の一つです。

 

題名にあるように、和菓子について、一つひとつの物語が紹介されています。

 

「鹿の子(かのこ)」のようにトッピングに小豆などが使われている和菓子がありますが、このトッピングの豆が少し煮崩れして割れている状態を、少し物騒ですが、「腹切り」というのだそうです。少しの煮崩れも許されない繊細な作業は和菓子作りで大事なことなのです。

 

ところで、この「腹切り」という言葉は大納言小豆では使われません。それは「大納言」が貴族を指す言葉だからです。腹切りとは切腹であり、切腹は武士の行う行為なので大納言小豆には用いられないのです。

 

AKB48の曲にもある「フォーチュンクッキー」は、実は日本の「辻占(つじうら)」という和菓子を元にしてできています。この辻占は煎餅の中に占い事を書いた紙を入れたもので、元々、辻占はこの紙自体を指す言葉です。これを元にして作られたのがフォーチュンクッキーです。この和菓子は簡単に買えるおみくじのような物なので、お正月に家族で食べてみてはいかがでしょうか。

 

鹿の子や辻占などは、家でいつも食べるような和菓子ではありませんが、この本では「おはぎ」など、ふだん食べているような和菓子についても紹介されています。この本のキャッチコピーは「この本を読めば和菓子が食べたくなる」。私がこの本を手に取った理由は、和菓子が好きという単純なものですが、読んだらとても和菓子が食べたくなりました。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 三重大会の発表より>

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小学生の時

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今後読みたい本

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