独特な文体で描かれる、生き生きとしたキャラクターの恋物語
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
藤田隼輔くん(兵庫・自由ヶ丘高等学校)

みなさん理想の彼氏彼女像はありますか。昔の歌に「命短し恋せよ乙女」という歌詞があり、若くてきれいなのも今のうちなので良い恋をしましょう、ということを伝えてくれているのですが、そのもじりとなっているのが、『夜は短し歩けよ乙女』という本です。作者の森見登美彦さんは京都を舞台にした小説をたくさん書いていて、独特な文体が特徴です。この本は本屋大賞の2位を受賞し、山本周五郎賞も受賞しています。
この本の魅力は、森見登美彦さんの独特な文体によって生き生きと描かれるキャラクターです。登場人物に黒髪の乙女という天然な大学1年生と、その子に片想いするサークルの先輩がいます。2人の視線から交互に描かれる形になっているので、自然と物語に入り込むことができます。さらに、作中には印象に残るような言葉がたくさん出てきます。僕が一番好きなのが「許せ友よ、彼女がすべてに優先するのだ」という言葉です。先輩が乙女に抱く一途な感情がとても濃く表現されていて、インパクトがある言葉だと思います。

この本には難解な単語が用いられているのですが、不思議と読みやすくてとても面白いです。読み終わった時に楽しかったという感情が湧いてきます。4章が最後のシーンとなり、タネ明かしされるようなつくりになっていて、スッキリとしてほっこりするような物語となっています。僕は男子校なので恋はしていませんが、それでも楽しめる本なのでぜひ読んでもらいたいと思います。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 関西大会の発表より>