1歳の女の子の行方は? 黄色い朝顔の秘密とは?
『夢幻花』東野圭吾
白水紀香さん(和歌山県立耐久高等学校2年)

非常に儚い花の例えである『夢幻花』というタイトル。表紙には浴衣を着た女の人がいて綺麗な朝顔がたくさん描かれています。夏の恋の話かなと思いながら読み始めた私にとって、プロローグ1は衝撃的でした。
あるところに夫と妻、その間に生まれた1歳の娘が仲良く暮らしていました。しかしある朝、日本刀を持った男に3人が襲われます。夫と妻が殺され、1歳の娘だけが残されます。私は最初からわけがわからず、「日本刀を持った男?」「1歳の娘はどうなるの?」と頭の中がハテナでいっぱいでした。
本編に入ると全くそのことには触れず、別の主人公の女の子、梨乃ちゃんが出てきます。梨乃ちゃんはオリンピックにも出られるくらい水泳が上手くて、周りから「頑張れ、頑張れ」と応援されていました。しかしある時、ピタっと水泳をやめてしまいます。
ところで私は、小学生の頃からの夢に向かって今まで一生懸命やってきました。けれど高校2年になった今、ふと「このままでいいのかな。違う道を選んだ方がいいんじゃないかな」と不安になり迷っています。そんな時この本を読んで、梨乃ちゃんのある言葉にドキっとしました。
「一生懸命自分が信じた道を進んできたはずなのに、いつの間にか迷子になっている」
この言葉にとても共感しました。まさに私は梨乃ちゃんと同じように迷子になっているのだと思いました。
そんな梨乃ちゃんの周りで様々な事件が起こります。従兄弟の自殺、祖父の殺人事件、この二つに関連しているのが黄色い朝顔です。朝顔に黄色なんてありません。しかし、江戸時代には黄色い朝顔はあったそうです。でも、今はない。どうしてないのか。不思議に思い、梨乃ちゃんはとことん調べ始めました。
ここからが面白くて、ページをめくるたびに新しい発見が次々出てきます。すると、ある人が梨乃ちゃんに声をかけます。
「黄色い朝顔だけは追いかけるな。追い求めると身を滅ぼす」
怖いですよね。でも梨乃ちゃんはそんなことで挫けず、その言葉でもっともっと黄色い朝顔を知りたくなります。
そしてついに黄色い朝顔の秘密が明かされます。知ったら必ず、すぐにでも誰かに話したくなるような面白い秘密です。私は友達や祖父に「ねぇねぇ、黄色い朝顔って知ってる? 実はね、○○なんだよ」って言うと、とても驚いてくれました。

秘密が明かされる度に梨乃ちゃんの心の変化があり、成長していきます。そして初めに話したプロローグ1の1歳の娘の行方は最後まで読まないとわかりません。この本は東野圭吾さんが10年間、考えて考えてやっと出版された本です。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>
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白水さんmini interview
好きなのは
ミステリー小説が好きです。作家では、東野圭吾さんと赤川次郎さんです。
本好きのきっかけ
はじめてサンタさんにもらった『くまのこミンのふゆじたく』を読んで以来、時間があると読んでいます。
小学時代
はやみねかおるさんの「名探偵夢水清志郎シリーズ」が好きでした。普段はだらしがない夢水清志郎が、隣りに住む元気な三姉妹と謎を解いていく話。新しいシリーズが出るたびに、姉とどちらが先に読むかもめるほど、続きが気になる話です。
これから
恋愛小説や、東野圭吾さんや赤川次郎さん以外のミステリー、雑学の本などを読みたいです。