みんなのおススメ

暴力女神が降臨!? 音楽と笑いの融合に目が離せない

『女神のタクト』塩田武士

大貝洋一郎くん(長崎南山高校2年)

『女神のタクト』(講談社)
『女神のタクト』(講談社)

紹介するのは、音楽とお笑いが一つに融合した、私のなかでは最高傑作の本、『女神のタクト』。私は男子校の吹奏楽部で音楽に携わっていたので、このタイトルにすごく魅力を感じました。「なんで女神?」最初はそんな軽い気持ちでページをめくっていたのですが、気が付いたら一気に読み終えていました。

 

ここで、ちょっと、女神の理想像をイメージしてみてください。女神のイメージは優しくて上品でおしとやか。通常はそんな感じですよね。

 

ですが、理想のイメージというのは壊されるためにあるのです。この作品の女神・主人公の明菜は、通常の女神とひと味もふた味も違います。気に食わなければ大の男でも投げる、蹴る、脅すなど、とにかく暴力でものを言わせます。なんでこの人が女神なのでしょうか…。

 

この本のキーパーソンとなる人物は2人。本当は音楽に対してすごい力を持っているのに、過去に経験したトラウマから音楽活動に復帰できずにいる気が弱くて頼りない指揮者、拓斗。男も仕事もすべて失った30歳の明菜に、拓斗をある潰れかけのオーケストラ楽団に連れてくるように依頼した、ヨレヨレのじいさん白石。一体彼は何者なのか…。

 

あまりに個性的すぎるメンバーたちとの破天荒な生活。拓斗や白石をはじめとするメンバーひとり一人が持つ音楽への想いに触れたことで、自分自身の音楽への思いを再び呼び覚まされた明菜は、何を思い何を決心していくのでしょうか。

 

登場人物同士の漫才のような会話に何度も吹き出しそうになったり、明菜や拓斗が抱えているものが想像以上に重く考えさせられたり。感動の涙なしでは読むことができないところもありました。

 

大貝洋一郎くん
大貝洋一郎くん

自分自身が持つ弱さと正面から向き合う、どんなに辛いことがあったとしても前も向いて歩んでいく勇気を与えてくれた本です。日々の生活において、自分の思い通りにいかないこともあるかもしれません。そういったときも目をそらさずに、今自分にできる小さなことを積み重ねていけば、いつか再生と転機のときが訪れます。この本が、みなさんにとって未知の世界、新しい自分との出会いのきっかけになればと思います。

 

[出版社のサイトへ]

 

<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>

こちらも 大貝くんおすすめ

『くちびるに歌を』 

中田永一(小学館文庫)

長崎県五島列島にある中学合唱部の物語。私は吹奏楽部に所属しているので、何か共感できるものがあるかなと読み始めたのですが、ただの青春物語でなく、中学生特有の悩みや苦しみ、それらを乗り越えての成長など、いろいろと考えさせられた本でした。全体の鍵となっているアンジェラ・アキさんの『手紙-拝啓十五の君へ』を改めていい曲だと感じました。

[出版社のサイトへ]

『桐島、部活やめるってよ』
朝井リョウ(集英社文庫)
性格が違えば部活も違う、5人の登場人物の視点から物語は進んでいきます。タイトルにもある「桐島」が突然部活をやめたことをきっかけに、それぞれの生活に広がっていく、小さな波紋、そしてそれらがいたるところでリンクしていく様は、読んでいてテンポもあったし楽しかった。同年代の人には高校生のうちに読んで欲しい本の1つ。

[出版社のサイトへ]

『まく子』
西加奈子(福音館書店)
子どもと大人の狭間にいる少年の物語。「まく子」という人物が出てくるのかと思いきや、出てくるのは「コズエ」という、とても変だけど、とてもきれいで、何かになろうという訳でもなく、そのままで足りている、そんな感じの少女。そんなコズエにも実はある秘密があった・・・。人間としてあたりまえなことだけど、信じること、与えること、受け入れること、変わり、そして死ぬこと。人が引き起こす奇跡、人の優しさに触れ、この世界で生きている人々がすぅっと愛おしくなる本。

[出版社のサイトへ]

大貝くんmini interview

小学生の頃

『マザー・テレサ』の伝記が好きでした。貧しい人々のために、どんなに非難されても自分の人生をすべての方々に精一杯尽くし、心からのつながりを大事にするマザー・テレサの生き方に小学生ながら感動しました。


これから読みたいのは

吹奏楽青春ミステリーの「ハルチカ」シリーズ(初野晴)。何にせよ、今後の自分につながっていくような本を読みたいです。