エイズ、ガンが克服される日は来る!体内でのウイルスvs.細胞たちのバトル
『好きになる免疫学』萩原清文
藤武知希くん(茨城・水戸第一高等学校2年)

今日、私はちょっと風邪気味です。以前は風邪をひくと毎回喘息に苦しみましたが、今では全く平気です。ふと思いました、なぜ喘息は治ったのか。そもそもなぜ喘息は起きるんだろう。その答えが、この本『好きになる免疫学』にあります。
この本を読めば、ウイルスと白血球のバトルがよくわかります。みなさんもきっと免疫学を好きになります。
体内に侵入したウイルスを倒す白血球の一種が、抗体と呼ばれる武器を作り、ウイルス目がけて発射します。ここがすごいんです。ひとつの抗体は基本的にはひとつのウイルスしか倒せません。そのため、白血球は体内に侵入したウイルスを分析し、遺伝子を切り貼りしている。組み合わせることによってそのウイルスに合った抗体を作るのです。なんと数億種類もの抗体を作ることが出来ます。まさに天才!
私たちが意識的にできない、コンピューターでさえ難しいであろうことを、脳みそを持たない小さな体の1パーツがやり遂げてしまうのです。
ところが、この天才白血球の攻撃が効かない最強のウイルスがいます。それがエイズウイルス。エイズウイルスは頻繁に変身するため、抗体による攻撃を避けてしまいます。さらに恐ろしいのは、免疫における司令塔の白血球をピンポイントで殺すことです。しかもこの殺し方が残酷。まず白血球の遺伝子を作り変えて、なんとエイズウイルスを生み出す遺伝子に変える、まさにデータ改ざんです。
そうすることでどんどん数を増やしていき、やがてはこの白血球の中から細胞膜を打ち破り白血球を殺すのです。これを繰り返していくうちに人間の免疫力はどんどん低下して病気にかかりやすくなってしまう。これがエイズの症状です。
この他にも、新型インフルエンザ、エボラ出血熱などの強敵が次から次へと現れています。ウイルスたちは私たち人間を倒すために必死になって進化しています。我々人類も負けるわけにはいきません。
現在、これらウイルスに対抗すべく特効薬、ワクチンの開発が世界中で行われています。ここに免疫学を学ぶ意義があります。免疫学の発展は必ず人類を救います。昨年、そのワクチンで数億人の命を救った大村智さんのノーベル賞受賞は私たち日本人にとってとても誇らしく、嬉しいニュースでした。過去の事例から見ても、エイズ、ガンなどの病気が克服される日はそう遠くはないと私は信じています。

ここまでの話を聞いて、難しく感じてしまった方、「学問書かよ、読む気しねえよ」と思ったあなた、安心してください、難しくありませんよ。この本ははそんな人たちにこそ読んでもらいたい一冊です。予備知識は何もいりません。
この本のほとんどのページにはイラストがあり、とても可愛らしいキャラクターたちがたくさん登場し、免疫の世界をわかりやすく案内してくれます。誰でも楽しく、簡単に読むことができます。
免疫は私にとって壮大なドラマです。想像してみてください。今この瞬間にもあなたの体内でウイルスと細胞たちが互いに必殺技を繰り出し、熱いバトルを展開しているのです。興奮しませんか。それだけでなく、人体の素晴らしさ、神秘性をみなさんに感じてもらいたいんです。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>
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『ご冗談でしょう、ファインマンさん』
リチャード・P・ファインマン 訳:大貫昌子(岩波現代文庫)
この本はノーベル賞を受賞した天才物理学者ファインマンさんの自伝で、とにかく面白く、お腹が痛くなるほど笑ってしまう。ファインマン先生の、誰にも臆せずに自分の興味の赴くまま行動する生き方は、さすが学者という感じで、私が参考にしている生き方だ。
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『坂の上の雲』
司馬遼太郎(文春文庫)
「まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている」(『坂の上の雲』より)。この本は明治維新を経て新たな一歩を踏み出した日本の歴史物語だ。四国出身の秋山兄弟(真之と好古)、正岡子規の三人を主人公に物語は進む。当時小国であった日本がどうやって日清戦争、日露戦争に勝ったのか、それから当時の日本人たちの様子などがよくわかり、先が気になるとても面白い本だ。私はなぜかバルチック艦隊との決戦前で泣いてしまった。この本を読めば、誰でもきっと明治の日本人の生き様に感動し、あえて言わないが心の中で深く感じることがあるはずだ。
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『ホーキングの最新宇宙論 ―ブラックホールからヘビーユニバースへ』
スティーブン・ホーキング 監訳:佐藤勝彦(日本放送出版協会)
『ホーキング宇宙を語る』を書いたホーキング博士の本。内容は少し難しいかもしれないが、最新の宇宙論、特にブラックホールについて細かく説明してくれる。光さえも逃げられないブラックホールから逃れられる粒子?宇宙の始まりとは?など、とても興味深く面白い話が、数式を使わずにわかりやすく書かれており、物理に興味を持つきっかけの一つとなった、私には思い出深い本。みなさんにもぜひこの本を読んで、物理学に興味を持ってほしい。
藤武くんmini interview
小学生のころ
『数の悪魔』という小学5年生の時に読んだ本は、当時とても好きだった。数学の面白い部分を小学生でもわかるよう説明してくれる本で、誰でも数学の素晴らしさ、楽しさに気付くことができる素晴らしい本だ。
影響本
今回紹介した『好きになる免疫学』に、大きな影響を受けた。来年受験生となるわけだが、この本を読んで免疫学、医学、それだけでなく生物学に興味を持ってしまった。現在、もとから行こうと考えていた物理学部、それから医学部、生物学部の三つのうちどれを志望学部にするべきか迷っている。
2015年印象に残った映画
映画『2001年宇宙の旅』が一番印象に残った。映像、音楽の融合はとても素晴らしく、まさに芸術的。それから、人工知能「HAL9000」、謎の石版「モノリス」、「スターゲート」など、今なお私たちを魅了するものがたくさん出てくる。難解かつ哲学的なこの映画はとても深い内容で、約50年たっても色あせないSF映画の金字塔で、私のフェイバリットムービーだ。
これから
哲学(ニーチェ)、生物学の本を読んでみたい。