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学校に行けなくなった子どもたちの居場所=フリースクールから見えてくるもの

『学校は必要か』奥地圭子

永田清かさん(愛知県立旭丘高等学校2年)

『学校は必要か』(NHK出版)
『学校は必要か』(NHK出版)

私は小学1年生のころ、学校が大好きで大好きでたまりませんでした。毎日学校に行って友達とおしゃべりをし、勉強もそんなに嫌いじゃなかった。「毎日でも学校に行きたい。なんで夏休みなんてあるの」って本気で思っていました。

 

でも高校2年生になった今、もし「学校が好きか」と尋ねられたら素直にうなずけない自分がいます。勉強もそんなに好きではなくなってしまったし、教室で友達とおしゃべりしていてもどこか違和感がある。学校に行きたくないなって、そう思う朝もある。小さいころ、あんなに学校が大好きだったのに。

 

私がこのことに気付いたのは、高2の4月。そして4月から去年の12月までずっとその原因を考えながら学校に通い続けていました。その間ずっと、自分の性格がひねくれちゃったのかなとか、これはきっと仕方のないことなんだとか、と考えていたんです。

 

でも今は違います。もしかしたら学校の在り方が間違っているのではないか、そんなふうに思うようになりました。

 

そんな視点を私に与えてくれたのがこの本です。この本が伝えたいメッセージはたった一つ。それはタイトルにある『学校は必要か』ということ。筆者は奥地圭子さんといって、「東京シューレ」というフリースクールを立ち上げた人です。

 

フリースクールというのは何らかの理由で学校に通えなくなってしまった子どもたちが学校の代わりにやってくる居場所です。この本にはフリースクールでの穏やかな日々や、フリースクールから見える学校教育について書かれています。

 

一番印象的だったのは子どもたちが学校に通えなくなってしまった理由でした。ある子は、学校の授業についていけなくなってしまって毎日出される宿題が怖くて学校に行けなくなってしまいました。

 

ある子は、そもそも学校に興味がなくなってしまって行く目的がわからなくなってしまいました。ある子は、教室で孤立してしまって、先生からの言葉に傷ついて学校に行けなくなってしまいました。

 

この本には学校のせいでつらい思いをしていたり、関心がなくなってしまったりした子どもたちがたくさん出てきます。彼らは親や先生から「学校に行け」って強制されたり、諭されたり、また自分でも学校に行かなきゃという義務感から、毎日つらい思いをしてボロボロになりながら学校に行く。そしてその結果、高熱を出すなどの体の症状が出てしまったり、家で暴力を振るうようになってしまったりするのです。

 

これっておかしくないですか? だって学校ってもっと楽しい場所でしょ? もっと笑顔になれる場所のはずでしょ? なぜ学校が子どもたちを苦しめるの? そんなふうにこの本は私に訴えかけてきました。

 

そして、そんな子どもたちは東京シューレという居場所を見つけました。そこに義務というものはほとんどありません。来たいと思った子どもたちが来たい時間にやってきて、いたい場所にいて、したいことをする。勉強したいと思ったら勉強して、何かイベントの企画がしたいと思ったら企画してみる。

 

そんな子どもたちの自由と意思が尊重される場所で、子どもたちはどんどん傷を癒していきました。そして成長していきました。そしてやがて、就職したり進学したり、それぞれの道を歩んでいくようになりました。

 

永田清かさん
永田清かさん

私やこの本の作者は学校否定論者ではありません。ただ一度、考えてみてほしいのです。どんな学校がこの国には必要なのか。どんな学校なら子どもたちが笑って過ごせて、どんな学校なら学校が好きだと子どもたちが胸を張って言えるのか。この本はそのことを考えるきっかけと知識や情報を与えてくれるはずです。

 

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>

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永田さんmini interview

好きなのは

好きなジャンルはミステリー、作家は綾崎隼さん、中山七里さんです。

 


小学生の頃

アガサ・クリスティやコナン・ドイルなどをよく読んでいました。

 


影響を受けた本

『さよならドビュッシー』(中山七里)は、私にとって一番大切な本で、悩んでしまったとき、泣きそうなとき、疲れてしまったときなどに読んでいます。読み過ぎて以前カバーが破れてしまいましたが…。

 


今後読みたい本

ジャンルは、教育関係やミステリー。シリーズとしては、「ハリー・ポッター」シリーズを英語版で読んでみたいです。あとは、タイトルにインパクトのある本を読みたいです。