私の人生を変えてくれた、最強の用心棒リボーンのような仲間
『家庭教師ヒットマンREBORN!』天野明/原作・子安秀明/著
堀場あかりさん(京都府立鴨沂高等学校)

『家庭教師ヒットマンREBORN!』はアニメや漫画でご存知の方もいると思いますが、今回紹介するのは小説版です。絵では表現できないようなことが小説では表現されているので、世界観をより知ることができてとても楽しめると思います。さらに続編では、本編では明かされていなかったことが登場人物それぞれの視点で描かれているので、この物語をより深く知ることができます。
物語の主人公は沢田綱吉、通称ツナです。イタリアのボンゴレファミリーというマフィアの血縁なのですが、そんなことなど知らずに日本で母と何不自由なく暮らしています。勉強も運動もできないダメダメな中学2年生です。
ある日、そんなツナの元に養育係と称する、リボーンという男が現れます。ボンゴレファミリーの後継者が亡くなってしまったので、ツナが次期ボス候補として指名されたからです。その結果ツナは敵対する勢力に命を狙われたり、次々と争いに巻き込まれていきます。ここまでだとよくある話ですよね? けれども、このお話のタイトルにもなっている、リボーンというのがすごいんです。リボーンは普段は風采の上がらないおっちゃんですけど、ピンチの時には頭は冴えるし腕は立つし最強の用心棒。そして何より絶対に裏切りません。こんな人が自分を支えてくれたらいいですよね。
実は私は小学校の頃にいじめられていて、教室へ行くことができませんでした。友達もいないし学校の先生もあてにならなかったので、保健室だけが私の居場所でした。中学の時はまたいじめられるのが怖くて、自分を押し殺してとにかく目立たないように生活していました。けれど、リボーンのようにいつも側にいてくれて絶対に裏切らない、そんな人がいつか現れて自分の人生を変える手伝いをしてくれる、そう信じていました。

私も自分の人生を変えたい、けどその方法がわからず日々を過ごしているうちに高校受験を迎えました。私は同じ中学校から通う人がほとんどいない高校をあえて選んだのですが、やっぱり1年生の時は人間関係がうまくいかなくて悶々としていました。
でもそんな時「君、うちの部活に来ない?頑張って練習したら必ず全国大会に連れてってあげる」という甘い言葉に誘われて、私は放送部に入りました。でも、そんな甘い話あるわけないんですよね。練習はすごく厳しくて泣きながらしたことも何度もありました。けれどその結果、私は京都府予選で優勝し本当に全国大会に行くことができたんです。
とうとう私は待ち望んでいた人に出会うことができたんです。その人たちのおかげで私の人生は大きく変わりました。リボーンという名前が象徴するように、私は人生を再生することができたんです。私の人生はまだ始まったばかりです。これからどんなことが起こるかわかりませんが、この本が折に触れて私を支えてくれるはずです。
[出版社のサイトへ]
<全国高等学校ビブリオバトル2015 関西大会の発表より>
こちらも 堀場さんおすすめ

『孫子』
海音寺潮五郎(講談社文庫)
『「孫子」の読み方』
山本七平(日経ビジネス人文庫)
部活の先生からすすめられて読んだ『英雄ここにあり』(著:柴田錬三郎)の中にたびたび登場する兵法を編み出した孫子に興味を持ち、海音寺潮五郎の『孫子』を読んでみると、兵法の本質はいかに戦わずして敵の思惑をくじき、自分を有利に持っていくかだということがよくわかりました。

そこで、孫子の兵法書を読んでみたくなりました。その時、顧問の先生に、孫子を読むならこれがいいとすすめられたのが山本七平の『「孫子」の読み方』です。この本は具体的な戦いを例に挙げて、孫子の兵法書を詳しく解説してあり、何度読み返しても新鮮な発見があります。ぜひ読んでみてください。

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎(中公文庫)
『「孫子」の読み方』の中に、旧日本軍の犯した失敗の例がたくさん出ていたので、もっと詳しく知りたいと思い、読みました。この本は、太平洋戦争中に日本軍が行った主たる作戦と、それに対するアメリカ軍の作戦行動を論理的に分析してあります。個人だけでなく組織が陥る失敗も詳細に分析してあり、『「孫子」の読み方』と合わせて読むことをおすすめします。
[出版社のサイトへ]
堀場さんmini interview
小学校の時

『夢をかなえるゾウ』
水野敬也(飛鳥新社)
中学受験のとき、待ち時間に読んでみたらと父にすすめられて読みました。主人公はごく普通のサラリーマン。ある日、酔った勢いで家のガネーシャの置物に「自分を変えたい」と愚痴ると、関西弁でしゃべるゾウが現れます。そのゾウは、自分はガネーシャという神様で、本当にダメな自分を変えたい気があるなら手助けをしてあげると契約書を差し出します。主人公はガネーシャが出す課題をこなしながら成長していきます。
ガネーシャは本当に神様なのかと疑う雰囲気で、課題もバカらしく思えたけど、その課題をこなしてどんどん変わっていく主人公を見て、私も変われるという希望が持てました。その頃辛いことがたくさんあった私は、この本のように勇気づけてくれる本を探して読むようになりました。その中で『REBORN』に出会い、自分の人生を変えることができました。そのきっかけになった本です。
[出版社のサイトへ]
2015年印象に残った本
『英雄ここにあり』柴田錬三郎(講談社文庫)
部活の先生からすすめられて『三国志』を読み始めました。柴田錬三郎の『英雄ここにあり』は、三国志の中でも登場人物の心の動きや情景がいきいきと描かれていて、読み始めたら止まりませんでした。特に私は諸葛孔明に心惹かれました。彼の戦略や人柄は「すごい」としか言いようのないものです。柴田錬三郎が描く三国志の人物像は、他の作家とは違った視点で捉えられていて、とても惹きつけられました。すでに三国志をご存知の方も、ぜひ読んでみてください。