みんなのおススメ

四人家族の食卓の風景を通して「役割」について考える

『幸福な食卓』瀬尾まいこ

曽根帆花さん(愛媛県立松山中央高等学校2年)

『幸福な食卓』(講談社文庫)
『幸福な食卓』(講談社文庫)

ある朝の食卓で「父さん、今日で父さんやめようと思うわ」と突然告白されたら、どのように返答しますか。「ふーん」って軽く受け流す人は、多分いないのではないかと思います。この本は、そんなお父さんの突拍子もない一言から始まります。

 

物語の中心になる中原家は4人家族。1人目はお父さんですが、実際はすごく真面目な方で家族に対しての想いがすごく強いお父さんです。

 

2人目は長男の直ちゃんです。すごい秀才ボーイで何でもできますが、なぜか彼女と長続きしない。そんな不思議な人です。3人目は直ちゃんの妹の佐和子ちゃん。主人公で、すごく繊細で真面目な子です。4人目のお母さんはお父さんに関わる事件で別居をしています。

 

中原家には素敵なルールがあります。それは朝の食卓を家族全員で囲むこと。私の家はあまりみんなで食べるという習慣がないので、すごく素敵な家族だなと思いました。

 

けれど、不自然に感じる場面もあります。例えば、主人公の佐和子ちゃんが「お父さんがうれしそうにしているとほっとする」だとか、「私たち家族はいたわりあって努力して尊重しあって一緒に生活している」だとか、ちょっと違和感がある表現をしているんです。

 

そんな家族がどんなふうに変化していき、どんな形で収まるのか。家族の雰囲気や変化によって食卓の風景も変わっていきます。

 

 

曽根帆花さん
曽根帆花さん

この本では、役割について深く書かれています。佐和子ちゃんだったら『学級委員』。私なら、学生なのでちゃんと勉強して成績上げることだとか、部活で副部長をしているので部員の支えになれる存在になろうってことだと思います。

 

しかし、私は「役割」というものを、絶対やらなくてはいけないことだと思っていました。それでちょっとうまくいかないことがあったりしてすごく悩んでしまい、三日間ほど、学校をお休みしてしまったことがあります。家族がかけてくれた声も耳に入らなかったのですが、佐和子ちゃんが言っていた言葉に道が開かれたような気持ちになりました。「ずるくてもいいから、役割なんてつまらない。だから目的をしっかりちゃんと果たすべき」と。

 

人には必ず役割はあると思うし、それに押し潰されそうな時もあると思います。そんなときに、この本がヒントになったらうれしいと思いますし、共感していただけたらなと思います。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>

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影響を受けた本

ビブリオバトルで紹介した『幸福な食卓』です。おもしろそう、と軽く選びました。なので、泣かされると思っていなかったし、自分のために書かれているような感覚です。家族はもちろん、周囲の方々の存在に気付くこともできました。

 


これから読んでみたい本

外国の本を読んでみたいです(日本語訳済みの)。