うさぎのサニーが地雷で苦しむアフガンの現状を世界に訴える
『サニー アフガニスタンへ 心をこめて 地雷ではなく花をください』文・柳瀬房子/絵・葉祥明
高橋美佳さん(千葉県立検見川高等学校)

今の日本人には馴染みのない地雷。けれどアフガニスタンでは、いつも誰かが地雷で傷つけられています。この本はうさぎのサニーが、地雷で苦しんでいる人たちの声を直接聞き、世界中に平和を訴えていくものです。
あるページを開いたとき、最初はサニーちゃんがただアフガニスタンを見ている風景画だと思いました。しかし、よく見てみると、地雷で体を吹き飛ばされた現地の人たちを、サニーちゃんがじっと見つめている絵だったのです。サニーちゃんが世界中に地雷の怖さを伝えるために現地を見ています。目を背けたくなるような真実から逃げないで。そんなサニーちゃんの姿を見て、私も現実に起きていることを知ろう、そして誰かに伝えよう、そう強く思いました。
地雷は、安いものでは3ドル程度で作れます。しかしそれを撤去するには100ドル以上のお金がかかります。しかも未だに一つひとつの地雷を手作業で取っています。地雷で苦しんでいる人たちがいて、一歩間違えれば死ぬかもしれない命懸けの作業をしている人たちがいる。この事実を私はこの本で知りました。
先日修学旅行で、沖縄の平和記念資料館を訪れました。そこには沖縄戦で亡くなった人たちの写真が置かれ、どのように亡くなったかが書かれていました。そのなかに、地雷によるという死亡理由があり、日本にも地雷があったことをはじめて知りました。改めて戦争や地雷は絶対にいけないものだと思いました。そして、無知、無責任、無関心が平和の妨げになっているのではないか、そう強く感じました。今年は戦後70年という節目です。戦争について考える機会が多い今、戦争や地雷がいけないものだと伝え続けていかなければいけないと思いました。

この本に、『ひとつ取ったら花の種、ひとつ取ったら苗木を一本』というものがあります。ひとつ地雷を取ったごとに花の種を一個植えよう、またひとつ取ったら苗木を一本植えよう。そうすることでいつかアフガニスタンに地雷がなくなり、大きな花畑になる。その大地をアフガニスタンの子どもたちが、地雷を気にすることなく走り回れるようになるまで私たちは見届けよう。そういう作者のメッセージです。私たちにできることは何なのか、私にはよくわかりません。でも知ることや、誰かに伝えることで平和が訪れる気がします。だから私は、この本を読み、地雷に苦しんでいる人が世界中にどれくらいいるのかを知っていただきたい。いつかアフガニスタンに平和が訪れるまで応援し続けたい、そう思っています。
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<全国高等学校ビブリオバトル関東大会の発表より>
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