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俵万智さんの和歌の解説で、光源氏と女性たちがより魅力的に

『愛する源氏物語』俵万智

栗山晏奈さん(滋賀県立膳所高等学校)

『愛する源氏物語』(文藝春秋)
『愛する源氏物語』(文藝春秋)

『源氏物語』というと最近は訳本がたくさん出ていて、あらすじをつかむことは比較的容易です。しかし奥深いところまで知ろうと思うとなかなか難しいのが、魅力でもあり、弱点でもあります。そこで俵万智さんの『愛する源氏物語』を紹介します。

 

この本の魅力の1つ目のポイントは、和歌です。『源氏物語』には和歌が795首も存在します。平安時代でいう和歌とは、今でいうTwitterやLINEのようなものです。和歌は字数制限31文字という中で、その時の状況や気持ちをギューッと詰め込んで相手に贈ります。昔の人にとって和歌は本当に大事で、なくてはならないものです。しかし、『源氏物語』がわかりにくいのも実はここにあって、和歌を理解しないと、登場人物の心情がすっ飛ばされた状態で読むことになり、あらすじしかわからないのです。

 

その和歌を、筆者の俵万智さんが私たちにわかりやすい言葉に変化させてくれるおかげで、私たちはこの本を伝わる物語として読んでいくことができます。

 

2つ目のポイントは、歌を贈る主人公の光源氏です。光源氏といえばかっこよくて何でもできる完璧な人、そんなイメージはありませんか。しかし女性から光源氏に対して「ちょっと~」とあきれられたり幻滅されたりしているシーンがあって、完璧なように見える光源氏がちょっと人間っぽく見えます。そのような部分がこの本で見え隠れするのが、とても楽しくて良いと思います。

 

そして3つ目のポイントは、和歌を受け取る女性たち。当時の女性たちは、男性にアプローチしてもらうまで待っていないとダメなんです。待ってばかりで精神を病んでしまったり、生霊になって人を呪い殺してしまったりする場面もあります。一方、強く優しく美しく生きた人もいます。登場人物一人ひとりの性格が描かれていて、読み応えがあります。

 

栗山晏奈さん
栗山晏奈さん

この本は和歌を中心に魅力的な女性そして魅力的な男性をうまい具合にまとめて紹介している本になっています。私は元々あまり古典が好きではなかったのですが、『源氏物語』を大好きになれたのもこの本のおかげです。古典があまり得意ではない高校生にもおすすめしたいです。

 

そしてきっとこの本を読むことで、自分の心を和歌に詰め込んで誰かに贈ってみたいなと思うはずです。「男性が読んでも面白いのかよ~」という人もいると思いますが、実は女心がわかっていない男性の方に、特におすすめしたいと思います。

  

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 関西大会の発表より>

こちら 栗山さんもおすすめ

『ストーリー・セラー』

有川浩(新潮文庫刊)

小説を「書く側」の女性と、「読む側」の男性が出てきます。この二人を中心にした物語は、力強く、しかしはかない終わりを迎えます。有川さんの作品の中で一番好きな作品です。

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『ナラタージュ』

島本理生(角川文庫)

先生と生徒の恋愛の話ですが、ドロドロしたものではなく、大人っぽい表現がされている本です。ああ、こんな恋愛の形もありだなぁ、素敵だなぁ、と思える一冊です。

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『塩の街』

有川浩(角川文庫)

私が大好きな有川浩さんのデビュー作です。年が離れていても、交わるはずのなかった二人でも、素敵な恋ができる。「塩害」というありえない災害が舞台の街で、人々の交流、心の動きがあたたかいです。

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栗山さんmini interview

好きなもの

恋愛小説やミステリーが好きです。好きな作家さんは、有川浩さん、辻村深月さん、七月隆文さんです。特に、有川浩さんは中学生の頃から大好きです。

 


小学生のころ

・「ハリー・ポッター」シリーズ:ハーマイオニーを目指して、呪文を覚えていたこともありました(笑)。

・「ナルニア国物語」シリーズ:ファンタジー小説が大好きでした。

・『星の王子さま』:祖父のすすめで読みました。友人について考えさせられる本です。キツネと王子様の話が好きです。

 


影響本

『宇宙を目指して海を渡る』

小野雅裕(東洋経済新報社)

私の筆者に対するイメージは、賢くて、順風満帆な人生のイメージがありましたが、必死で夢を追いかけて叶えた筆者の姿に、私も頑張らなくちゃ、と勉強へのやる気が出た一冊です。


印象本2015

『図書館戦争ーTHE LAST MISSION-』(映画)

図書館戦争は、本を守る話なのですが、恋愛面も、本についての思いも、前作よりよくなっていて、幸せな2時間を過ごせました。

 


これから

無駄な表現がなくて、スッと心に染みる本を読みたいです。なかなかタイトルやあらすじだけでは、その本の表現がわからないけれど、そんな本を探しながら読書をしていきたいです。