サトルと飼い猫ナナの強い心の繋がりに大号泣
『旅猫リポート』有川浩
細川佳吾くん(東京成徳大学高等学校1年)

本当の幸せって何でしょう。僕は人との繋がりがあってこそ本当の幸せがあると思います。こう思えるようになったのも、この『旅猫リポート』を読んだおかげです。
実は僕は、動物が苦手です。でもこの本を読み終わったとき、とても面白いと思いました。それはなぜかと言うと、猫が擬人化して描かれていたからです。猫が擬人化するお話として有名なのが夏目漱石の『吾輩は猫である』ですが、僕はこっちの方が面白いのではと思いました。
主人公サトルは涙なしでは語れない数多くの秘密を抱えてしまい、飼い猫であるナナを飼えなくなってしまいます。そしてナナの新しい飼い主を探すために、小・中・高と友人たちをめぐっていくのですが、この友人たちが僕は重要です。例えば3人目に出てくるスギという人物。彼は犬のペンションを経営していて動物の扱いには慣れているのですが、ナナを預けようとしたときに、そこで飼っていた犬のトラマルとナナが喧嘩をしてしまいます。でも実はそれは、飼い主たちの気持ちを敏感に感じとっての行動でした。スギとサトルには過去からの深い繋がりがあります。このように過去を振り返りながら友人たちをめぐっていき、ナナを飼ってくれと頼んでいくのですがなかなかうまくいきません。
サトルとナナはとても仲良しです。例えば旅の途中で初めて富士山を見たとき、その圧倒的な存在感に感動し「こんなものを見たのは僕たちしかいない。僕たちは最強の旅人で旅猫だ」と言います。ナナが自然と発した“僕たち”という言葉からも仲の良さが伝わってきます。ではなぜ、サトルはそこまで必死にナナの飼い主を探していたのか。実はサトルは病気だったのです。
ついにサトルは入院してしまいます。ここから僕は一番感動してティッシュが足りなくなるくらい泣いてしまいました。そのときナナは病院近くの親戚の家に預けられていたのですが、飼い猫をやめ野良になってまで、サトルのいる病院に通うようになったからです。安定した生活ではなく、サトルの側にいることを選んだ。それだけサトルとの繋がりが強かったのだと感じました。さらに、ナナは旅の途中でサトルの余命が短いことに気づいていました。

最終的にサトルは死んでしまいますが、死後に大量のお悔やみの手紙が届きます。僕は、本当の幸せってなんだろうと思いました。僕は幼い頃にひいおじいさんを亡くしています。そのときのお葬式で、親戚以外のたくさんの方々がお線香をあげにきてくれました。サトルは30代半ばで死んでいます。とくに何かを遺したわけではないのに大量の手紙が届くということは、その時その時にその人との時間を大切にしていたからこそ、死んだ後も覚えてもらっていた、生きた証をその人のなかに遺せた、つまりそれが本当の幸せなんじゃないかと僕は思いました。だから僕は社長になるとかお金持ちになるとかよりも、サトルのように人間関係を大切にしていきながら、その人のなかに自分の生きた証を遺せるような生き方をしていきたいとこの本を読んで強く思いました。
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<全国高等学校ビブリオバトル関東大会の発表より>
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