ショートショートの名手の珍しい長編小説。題材は父親
『明治・父・アメリカ』星 新一
藤本妃奈子さん(三重県立名張高等学校2年)

星新一というとSFの第一人者であり、ショートショートの名手とも呼ばれています。彼が書いてきたショートショート1000を超えますが、それに比べ長編小説は少なく6冊しかありません。その6冊のうちの1冊は、星新一さんのお父さん、星一(ほしはじめ)さんの話を書いたノンフィクション小説です。
星新一は、本編の中で、自分の父親について小説を書くというのはすごく書きづらいと言っています。他人として書こうと割りきって最後まで書いたようです。
さて、お父さんの星一さんは福島の田舎で生まれで、10代の時に東京に出ていろいろなことを学び、苦い思いをしながらもさらに勉強したいと思い、20代でアメリカに渡ります。20代で小学生に混じって英語を学び、住み込みで働きながらいろいろなことに挑戦するという物語です。
私がこの本の中で面白いなと思う点の一つに、私たちが知っている歴史上の人物、日本史で習う人たちがたくさん出てくることが挙げられます。例えば、野口英世や初代総理大臣の伊藤博文、津田梅子の妹の余奈子、そういう人たちが登場し、彼らが何をしたかということだけではなく、どんな性格なのかということが垣間見えて、身近な人に感じられます。
星一さんは自分の理想に向かって邁進しているのですが、いつでも謙虚で気配りを忘れないので、読んでいてとてもすがすがしい気持ちになれます。何か悩みごとがあったり、迷っていたりする時に読めば、その悩みをちょっとでも忘れられるような作品です。
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<全国高等学校ビブリオバトル2015 三重大会の発表より>
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