「大切な物は目に見えない」。何度も読んで励まされた宝物
『星の王子さま』サン=テグジュペリ 河野万里子:訳
河本莉衣さん(兵庫・神戸学院大学附属高等学校1年)

『星の王子さま』は作家であり飛行機の操縦士でもあるフランス人作家のサン=テグジュペリが書いた作品です。いまなお世界中で愛されている作品であり、みなさんの中にも知っている、読んだことがあるという人がいるでしょう。
一章にこんな話が載っています。小さなイラストが描いてあり、この絵はこわいかどうかと聞くのです。みなさんが見たら、きっと帽子と答えるでしょう。実はこれ、「ボア」という大きな蛇が象を飲み込んだ絵なんです。こうして始まる不思議な物語は、私にとてつもない衝撃を与えました。
ある日作者の操縦する飛行機が、砂漠の真ん中に不時着してしまいます。人が住むところから千マイルも離れた砂漠の真ん中で、孤独と不安に包まれた作者が出会ったのは、一人の可愛らしい少年でした。この少年が作品のタイトルにもなっている王子さまです。実はこの王子さま、様々な星をめぐって地球にやってきた少し不思議な男の子なんです。この作品は王子さまがめぐってきた星々での大人との出会い、そして作者との出会いから別れまでを記した作品となっています。
私がこの本をおススメするのには、3つの理由があります。
まず1つ目は、この小説からは、重さはまったく感じられません。それはこの本のいたるところに散りばめられている、知的表現にあると思います。
この作品では、王子さまが星々で出会う大人たちとの掛け合いが半分くらいを占めていて、本当にたくさんのキャラクターが登場します。例えば傲慢な王様、飲んだくれ、エリートを気取る働き者、街頭に明かりを灯す点灯人など。私が面白いと感じたのは、そのキャラクターたちが今の社会を実際に生きている大人たちと重なる部分があるというところです。見習ってはいけない、こんな大人にはなりたくないなど、学生の今だからこそ感じる部分も多いのではないかと思いました。これから自分が生きていく中で、きっと気づいたり学んだりしていくであろうことを、王子さまがさりげなく教えてくれます。
2つ目の理由は、外国人作家ならではの翻訳の多さです。私が読んだ本は、新潮文庫版で、河野万里子さんという方が翻訳したものです。出版社により翻訳者も異なり、言葉の節々やリズムの違いが個性とともに表れます。そういったところに注目して読んでみるのも、とても面白いと思いました。

そして、私はこの本を初めて読んだ小学校4年生のときから、この本に何度も励まされてきました。何度読んでも飽きない本で、生涯を通しての宝物になると思います。またこの本は読む度に、私の年齢が上がっていく度に、新しい一面も次々と表れます。
「大切な物は目に見えない」
この言葉は作中で、キツネが王子さまに贈る言葉であり、この作品の中で一番好きな言葉でもあります。大切な物こそ、心で見なくてはきっと見えないのだと思います。帽子に見えるあの絵にも、同じことが言えるのではないでしょうか。
[出版社のサイトへ]
<全国高等学校ビブリオバトル2015 関西大会の発表より>
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河本さんmini interview
小学生のころ
お料理がテーマの童話「こまったさんシリーズ」「わかったさんシリーズ」(寺村輝夫作)は全部読んでいました。
影響本
青木和雄さんの『イソップ』『HELP』『ハッピーバースデー』など。人間としての姿勢など、本当にたくさんのものを教えてもらました。
印象に残った本2015
・『聲(こえ)の形』(大今良時による漫画)
心の通うことの難しさ、友達の大切さを学びました。
・『リトルプリンス 星の王子様と私』(映画)
大切なことは何か、知り、考えました。
これから
伊坂幸太郎の本は全て読みたいです。