ケーキがチャリごと盗まれた!高校生が身近な謎を解き明かす
『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信
成田千代子さん(千葉県立八千代高等学校)

この作品は、普通のミステリーとはちょっと違ったミステリー。殺人事件という大きな事件は一切、起こらないんです。私達の身の回りに普通に起こるような謎を推理していく短編集です。
例えば、『羊の着ぐるみ』という話では、なくなったポーチを推理で探します。そこら辺を探して回るのではなくて、推理します。主人公の高校生・小鳩くんは、探し物が見つかったこれまでの自分の行動を一個一個確認して、そこにいた人に話を聞いて、どんどん推理を進め、最終的にポーチを見つけ出します。こうした、普通のミステリーとは違う面白さがあります。
私が一番好きな謎は、『おいしいココアの作り方』という謎です。友達が作ったおいしいココアには、作り方に謎があったのです。まず、コップに普通にココアパウダーを適量入れます。そこに、ごく少量のミルクを注ぎます。それを練ってペースト状になったら、そこに飲む分のミルクを足して、またかき混ぜて、ちょっと砂糖を入れて、とやれば、おいしいココアができるそうなんですね。そこで、友達は、「そのココアはコップいくつでできるか」と言うんです。彼は、2つではなく、1つでできると言う。それはなぜかというのを推理していくのですが、この真相が結構面白いのです。
この作品の中で好きなのが、登場人物の小山内さんという女の子。小鳩くんと「互恵関係」を結んでいる同級生。ちいさくて、声もあまり大きく出せなくて、人と話すのがちょっと苦手な、かわいい子なんです。彼女は、実は過去にいろいろあったんですが、その真相がわかった時、びっくりしますよ。そして、彼女が、題名にある「春期間限定いちごタルト」を食べるシーンが、本当においしそうに食べていて、とてもいいんです。

<全国高等学校ビブリオバトル関東大会の発表より>
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『終末のフール』
伊坂幸太郎(集英社文庫)
地球滅亡まで3年という世界に生きているのに、登場人物が悲観的にならず、でも3年後に来る終末のことを考えて生きているのがとても面白いです。私は特に、「太陽のシール」という1編が、好きで読むと幸せになっちゃいます。
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『霧の向こうのふしぎな町』
柏葉幸子(講談社青い鳥文庫)
小学生の主人公が、夏休み、父からもらった傘に導かれてふしぎな町へ行く話なのですが、その町が、とにかく楽しそうでとても好きです。読んでいると楽しく、優しい気持ちになれて大好きな1冊です。小学時代からの愛読書で、今でも夏になると1度は絶対に読みます。
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成田さんmini interview
好きなのは
作家なら、森見登美彦さん。ジャンルは、ファンタジー系、娯楽小説です。
影響本
『妖怪アパートの幽雅な日常』香月日輪
主人公がアパートでいろいろな人、妖怪と出合い、変わっていく。良い意味で楽観的になったと思います。
2015印象本
『LOVE SO LIFE』こうち楓(漫画)
物語に出てくる双子(2歳)の成長がとても泣けます。
これから
ファンタジー系のお話や、笑えるお話、会話劇が面白いお話を読みたいです。