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関西人には笑いのツボ。死神が主人公の短編集

『死神の精度』伊坂幸太郎

谷澤花梨さん(大阪府立日根野高等学校1年)

『死神の精度』(文春文庫)
『死神の精度』(文春文庫)

主人公は千葉さんという死神です。死が迫っている人の元へ行き、その人に利用価値があるようならその死を見送りにし、別に死んでも構わないと判断するなら「死んでも可」という報告を上にします。そんな死神が主人公の短編集。実はすべての話がつながっています。

 

私がこの本を好きなポイントは3つあります。

 

1つ目は大阪人が気にする笑いのとり方。千葉さんは相手に対して自分が死神とは言わないんですが、ステーキが出てきたときに「死んだ牛は美味いか?」って聞いてしまうんです。ステーキを死んだ牛とは普通言わないでしょう、バレてしまうから。でも出ちゃってる。こういうところに関西人はツボだと思います。

 

自分から笑いをとりに行ってるように思わせない淡々とした口調であるにもかかわらず、なんだか知らないけれど面白くて、読んでる間に口角が上がってしまう。私がすごく好きな笑いのとり方です。

 

2つ目は構成。この本の構成はパズルみたいになっています。一話一話がつなががっていたり、最初と最後の話でハッと気づくところがあったり、情景が思い浮かぶようなすごいつながりがあったり。

 

さらに同じ作者の違う本ともつながりがあったりするので、そこもぜひ読んでいただきたいです。他の本を読んでいて「これ、あの本のあの人じゃない!?」ってなるのが楽しいのです。

 

そして3つ目、登場人物がすごく個性的なこと。例えば主人公の千葉さんは「音楽が好きな死神」とシュールです。途中で出てくる藤田さんという人も悪い人なんですが「優しい悪い人」。そんな人たちが出てきます。

 

谷澤花梨さん
谷澤花梨さん

私がこの本に出会ったのは、父が伊坂幸太郎先生の本を好きだったからで、当時はまだ小学5年生。このタイトルと表紙の暗い感じから、父に「これ怖い本なんちゃうん?」と聞いたんですが、「ええから読んでみい」と言われ、恐る恐る読んでみました。そこからスッとハマっていき、今はもうこの本の虜になっています。

 

私はこの作者の本を『死神の精度』で初めて読みましたが、他の作品を読んでもやっぱりここへ戻ってきてしまうくらい、この本が大好きです。

  

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 大阪大会の発表より>

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谷澤さんmini interview

好きなジャンル・作家

好きなジャンルはミステリー、SF。好きな作家は伊坂幸太郎先生。


今後読みたい本

同じ本をそれぞれの登場人物の視点から見た短編小説が読みたいです。