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袋とじを開けると短編が消える!? 紙の本のイリュージョン

『生者と死者 酩探偵ヨギガンジーの透視術』泡坂妻夫

薮内隆志くん(大阪・明星高等学校)

『生者と死者 酩探偵ヨギガンジーの透視術』(新潮文庫刊)
『生者と死者 酩探偵ヨギガンジーの透視術』(新潮文庫刊)

世にもミラクルな本を紹介します。それは、泡坂妻夫著『生者と死者 酩探偵ヨギガンジーの透視術』。この本、内容はミステリー小説です。ですが同時に「取扱注意」と書かれています。その通り! この本は本当に取扱注意なんです! なぜならこの本、開いてみますとページが15ページほどの間隔で閉じられているのです。そう、ページが袋とじになっているのです! みなさん驚きのようですね。この本自体がミステリー。仕掛け付きの本なのです。

 

気になる読み方について説明しましょう。この本はページが閉じられていますが、まずは気にせずそのまま通して読みます。全部で30ページほどの短編になっています。その短編を読み終わったら、今度は袋とじをすべて切り開きます。するとなかから新たなページが現れ200ページほどの長編が読めるようになります。ページを切り開くことによって現れたその長編を読むと、どうでしょう。ページを切り開く前に読んだはずの短編とはまるっきり違う、別物の話になってしまうんです。そして、元々あったはずの短編はいつの間にか消えてしまっています。まさに読者自身が直にミステリーを体感できる、手品のような本なのです。

 

ストーリーを簡単に説明します。ページを切り開く前にも後にも共通していえることは、あらゆるものを見透かすことができるという超能力をめぐる物語だということです。ページを切り開く前の物語は、超能力が使えるという青年とある女性とのラブストーリーのような話です。

 

ところがページを切り開きますと、ヨギガンジーという名の酩探偵が登場します。この酩探偵ヨギガンジーが超能力がらみなのではないかという難事件に挑戦し、謎を解いていく推理小説へと大変身するのです。しかも変わるのはストーリーだけではありません。ページを切り開く前の物語では女性だったはずの登場人物が、開いた後には男性になっていたなど登場人物の姿さえも変身してしまうのです。物語はページを切り開くことによってより広くなる。その変化を楽しむことこそが、ほかにはない大きな楽しみ方です。

 

最近はネットを使った電子書籍が増えていますが、紙の本でしか味わえないイリュージョンがここにあります。僕はこの本を読んで、改めて紙の本の良さに気付きました。これからさらに本の電子化が進んでいくと思いますが、この本はミステリーという驚きを通して、紙の本の大切さも教えてくれる貴重な本です。

 

薮内隆志くん
薮内隆志くん

最後に一言。ここはミステリーっぽくカッコ良く言いたいと思います。

 

さあ、諸君! この読者までもが参加できる前代未聞の事件に挑戦し、紙の本の良さを再認識してみるのはいかがであろうか。それでは健闘を祈る!

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>

こちらもおすすめ

『乱れからくり』

泡坂妻夫(創元推理文庫)

紹介した『生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術』と同じ作者の本。僕が読んだミステリーの中でも、この本は格別。作者の泡坂妻夫さんは、作家でありながらマジシャンでもあったという変わった人で、トリックの見せ方や伏線は、マジックのようにあっとおどろく。アガサ・クリスティや江戸川乱歩にも負けないぐらいの隠れた傑作だと思う。

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『朝のこどもの玩具箱』

あさのあつこ(文藝春秋)

有名なあさのあつこさんの短編集。SFやファンタジー、現実的な物語など、いろいろなジャンルの物語が6つ。どれも希望に満ちて、明るさをくれるし、長編になってもいいぐらい、スケールの大きさがある。まさに小説が玩具箱のようにつまった一冊。ハードカバー版のデザインが玩具箱のようにカワイイデザインになっているのも好き。

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『サマーウォーズ』

岩井恭平 原作:細田守 (角川文庫)

アニメ映画で有名なサマーウォーズ。だけど、小説になっても興奮と感動はそのまま。映画を見る前でも後でも十分楽しめる。読み進めるのがもったいないぐらいの面白さ100%!!

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mini interview

好きなジャンル

1位:ファンタジー 香月日輪、あさのあつこ 人間と妖怪(不思議なもの)とのつながりを描いた作品が好き。

2位:ミステリー 泡坂妻夫、江戸川乱歩 ホラーが混じったようなミステリーが好き。

3位:青春 宗田理「ぼくらシリーズ」、森絵都「カラフル」 明るくなれるようなものが好き。

 


本好きになったのは

中学2年の夏、父にゲーム禁止を言い渡され、退屈だった時に『サマーウォーズ』のノベライズ本を祖父に買ってもらった。読んでいくうちにテンションが上がるほど夢中になり、読み切ってしまうと、かえってさびしくなってしまうぐらいだった。それから読書が好きになり、本屋や図書館をめぐりはじめた。

 


小学時代

H.G.ウェルズ『宇宙戦争』

5年生の時、父に買ってもらった自由帳に、火星人の戦闘マシンのイラストを自分でアレンジして描いたり、自分で考えたマンガに火星人を登場させたり・・・想像欲をかきたてられた。

 


2015印象本

細田守『バケモノの子』(小説版)

好きなサマーウォーズを作った人ということもあって、感動は大きかった。主人公の熊徹と九太の関係がスゴクイイ。熊徹や九太と友達になりたい!