女が住む砂穴の家に閉じ込められた男の物語
『砂の女』安部公房
本藤大翔くん(埼玉県立和光国際高等学校)

主人公は男の数学教師。珍しい虫を採集して昆虫大図鑑に自分の名前を載せるため、海辺の砂丘へ向かいます。しかし、男は行方不明になり、捜索願や新聞広告もすべて無駄に終わります。
休暇を利用して汽車で半日ばかり海岸に出かけた男は、途中典型的な貧しい村落を通って砂丘へ向かいますが、なかなか珍しい虫に出会えません。砂丘に近づくにつれてどんどん暗くなり、夜も更けていきました。男は仕方なく、民家に泊めてもらいます。その家は縄梯子を使わなければ降りていけないほど深い砂穴に埋まっていました。家の壁は剥げ落ち、柱は歪み、窓にはすべて板が打ち付けられ、畳はほとんど腐る一歩手前で歩くと濡れたスポンジを踏むような音を立てる。その上焼けた砂の蒸れるような異臭が一面に漂っている。私はこのような家にはお金をもらってでも泊まりたくありません。
その家には女が一人いました。夫は砂に巻き込まれ死んでしまったと言っていますが、たぶん嘘で男を惹きつけるか、同情を誘うかの口実と思います。そこで男は砂かきの手伝いを頼まれます。1日でも砂かきを止めてしまうと家が潰れてしまうからです。次の日、男が朝起きて昨日縄梯子があったところに行きます。しかし縄梯子はなく、砂穴から出られなくなっていました。犯人は村人で、人手の足りなくなった村で砂かきを主人公に強いようとしたのです。
男は、突然狂ったように叫び出します。なんと言えば良いのかわからないので、ただ声の限りありったけの力でわめくのです。叫ぶという行為は人間の本能的なものに私は感じました。男は穴から出ようと四苦八苦します。重病人のふりをして労働力がないところを証明し、警戒心を解こうとしました。しかしそれは失敗に終わってしまいます。

穴と言うのは私たちにとって何か特別な意味があるのではないかと思います。ビートルズも『A Day in the Life』でブラックバーンに開いた穴を数えたり、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』でも井戸が物語の重要な影響を与えたりしています。なぜこのように人は穴に魅せられるのでしょうか。この小説はミステリーとしても、恋愛としても、サスペンスとしても読みごたえがあります。
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<全国高等学校ビブリオバトル関東大会の発表より>
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本藤くんmini interview
本を好きになったきっかけ
本を好きになったのは小学校5年生くらいです。外で遊ぶよりも、家の中で本を読んだりゲームをしたりする方が好きでした。
小学生の時
江戸川乱歩の「怪人二十面相シリーズ」をよく読んでいました。名探偵明智小五郎が小林少年とともに怪事件を解決していく話です。