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作者は文化人類学者。奥深い世界観とスピード感のある展開が魅力のファンタジー

『精霊の守り人』上橋菜穂子 

長浜希実さん(栃木県立宇都宮女子高等学校2年)

『精霊の守り人』(新潮文庫刊)
『精霊の守り人』(新潮文庫刊)

この本はもともと児童書ですが、今では大人にも親しまれています。『精霊の守り人』を始めとする「守り人シリーズ」というのがあり、それはこの後も続きますが、シリーズの一冊としても楽しめるし、この一冊だけでも存分に楽しむことができます

 

舞台は新ヨゴ皇国、主人公は30代の女用心棒バルサ。ある日バルサはひょんなことから新ヨゴ皇国の第二皇子であるチャグムの命を救います。

 

実はそのチャグム、精霊に卵を産みつけられたことで実の父である帝から命を狙われていました。チャグムの母である妃はバルサの腕を見込んでチャグムを助けてほしいと頼み込みます。バルサはチャグムを連れて王都を飛び出し、それが物語の始まりとなるのです。

 

帝の放った追手やチャグムの卵を狙う異界の魔物など、様々なものからチャグムを守りながら、バルサたちはチャグムの卵を無事に孵すための旅に出ます。

 

この本の魅力はたくさんあるのですが、その中の3つをご紹介します。

 

1つ目は、スピード感とスリルのある展開です。それは私が小学生の頃からずっと感じていることです。私がこの本に出会ったのは小学3年生の時ですが、その時はとにかく楽しい!面白い!続きが知りたい!という気持ちだけで読み進めていきました。スピード感のある、スリルのある展開の虜になってしまったのです。それから何度読み返してもその時感じたワクワクは薄れることがありません。

 

2つ目は世界観の奥深さです。これは中学生になって気付いたことです。この本はファンタジーですが、私たちの世の中が抱えているたくさんの問題も隠されていました。例えば権力のある人による情報操作だったり、一つの国に住む先住民と移住民の問題だったり、お祭りなどで形式だけは受け継がれても本質は伝わらなかったり、そういった問題です。

 

また作者の上橋さんが文化人類学者としてオーストラリアの先住民、アボリジニの研究をされている方だということも知って、この本には上橋さんの学者としての目も潜んでいることを知りました。

 

3つ目は、人間味に溢れた魅力的な登場人物たちです。これは高校生になって改めて気付かされたことです。私は今まで、とにかくかっこいい主人公としてのバルサを追いかけていました。ですが、チャグムに対して母性を抱いたり、育ての親に対して感謝の念を感じたりする、一人の女性としてのバルサを見つけることができました。

 

長浜希実さん
長浜希実さん

もちろんバルサだけでなく、チャグムも他の登場人物たちもみんな人間味に溢れた魅力的な人たちです。こんなに壮大な物語を描いていながら、登場人物の一人一人を大切に描く上橋さんは本当にすごいなと思います。

 

もしかしたら、バルサと同じくらいの歳になったらもっとたくさんの見方でこの本を楽しめるのかと思うと、今からそれが楽しみで仕方がありません。みなさんも、新ヨゴ皇国の匂いと空気を感じて、とにかく楽しい旅に出てほしいと思います。今のあなたしか読めない『精霊の守り人』がきっと見つかります。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2015 全国大会の発表より>

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