アフリカで唯一民主主義が成立、ラピュタのような地域ってどこ?
『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行
堀内彰人くん(和歌山・開智高等学校1年)

みなさんソマリアという国をご存知ですか? どこにあるか、どんな宗教が信じられているか、どこに首都があるか? 辞書で調べてみるとこんなことが出てきます。「ソマリアとはアフリカの最東端にある国。宗教はイスラム教。首都はモガディシュ。」辞書でわかるのはここまでです。そしてこの国をもっと深く知ることができるのが『謎の独立国家ソマリランド』という本です。
この本によるとソマリアは現在3つの地域に分かれているそうです。
そのうち1つ目は、一番南にある南部ソマリアという地域。南部ソマリアではたくさんの武装勢力が戦っていて、まるで近未来の漫画『北斗の拳』みたいだということで、「リアル北斗の拳」だと書いてあります。
次に2つ目はフントランド。フントランドというのは海賊が活躍している地域で、海賊が冒険をする漫画『ONE PIECE』になぞらえて「リアルONE PIECE」だそうです。
そして3つ目が、この本のテーマとなるソマリランドです。ソマリランドはなんと例えられているか。それは「リアルラピュタ」です。なぜこの地域がジブリのアニメ『天空の城ラピュタ』に例えられているのでしょう。
アフリカでは、例えば選挙をすると、負けた方がこの選挙は不正だとして争いを起こし、民主主義が機能しないことが多い。しかし、アフリカという地域のなかで民主主義が成立している唯一の地域、それがソマリランドです。ソマリランドがなぜ民主主義を実現できているかがこの本の最大のテーマ。それは、昔この国を占領していたイタリアとイギリスの関係、この国の「士族」というグループ、また、この国に住む遊牧民族の掟が関係しています。

この本はノンフィクションで面白い。書き方がとても軽く、小説のようにどんどん読めていく。そしてミステリー小説のように、このソマリランドはなぜ民主主義が行われているのかをどんどん解き明かしていきます。
事実は小説より奇なりという言葉がありますが、まさに「小説より奇」なのがソマリランドという世界。武装勢力が戦い、犯罪が横行し、治安が悪いソマリランドへ実際に行くのはとても難しいのですが、この本を読めば、行かずともソマリランドという世界を見ることができます。
[出版社のサイトへ]
<全国高等学校ビブリオバトル2015 関西大会の発表より>
こちらも 堀内くんおすすめ

『深夜特急』
沢木耕太郎(新潮文庫刊)
この本は著者の沢木さんがインドからイギリスまで路線バスを利用して旅行する紀行文なのですが、インドで病気にかかったり、途中で寄るマカオでカジノにはまったりと、「ここで話が終わってしまうのではないか」とハラハラしてしまいます。街の風景や出会った人がうまく描かれており、どんどん読み進んでいけます。
[出版社のサイトへ]

『福家警部補の挨拶』
大倉崇裕(創元推理文庫)
この推理小説は、まず犯人の殺害シーンから始まっています。完全犯罪に挑む犯人と、その犯人を捕まえようとする福家警部補の攻防が楽しい一冊です。
[出版社のサイトへ]

『考証要集 秘伝! NHK時代考証資料』
大森洋平(文春文庫)
この本はもともとドラマ制作の時代考証のために作られた本だそうです。江戸時代に鍋焼きうどんを登場させてはいけないとか、指揮官と司令官の違いなど、時代劇を見ていて楽しくなる、目からウロコの知識がたくさん載っています。
[出版社のサイトへ]
堀内くんmini interview
好きな作家
三浦しをんさん。日曜の新聞の書評欄に三浦しをんさんが書いた書評がないかといつも見ています。
小学生のころ
『マジック・ツリーハウス』シリーズが好きで、新しい本が図書館に入る度に読んでいました。歴史上の事件をモチーフにした小説で、ワクワクしました。