トビタテ生のヤリタイコト日記

~こんな本が僕たちの背中を押してくれた

下山明彦くん東京大学文科I類2年)

第5回 一過性の「援助」ではなく、自立に結び付くコミュニティづくりを目指してフィリピンで奮闘

~トビタテ生の挑戦 その2 大野雛子さん(東洋大学文学部3年)

貧困の根本的解決の解は、人々の自立しかない―。数多くの新興国を訪ね、フィリピンではスラムに住む人と寝食を共にしたからこそ達した境地なのでしょう。現在、その「解」を実践する力を得るべく、トビタテ生としてフィリピンに滞在する、大学3年生の大野雛子さんを紹介します。

 

大野さんが初めてフィリピンを訪れたのは大学1年の夏休み。大学のゼミのフィールドワークの一環でした。「海外に行けば、何かが変わるかもしれない」。そんな期待を込めて旅立った初めての海外、初めての新興国。彼女はそこで、笑顔を絶やさない人で溢れていることに驚いたそうです。思わず、「なぜずっと笑顔でいるの」とたずねると、「自分が笑顔でいたら周りの人も幸せでいられるでしょう」との答えが返ってきたといいます。

 

でも、笑顔の裏の現実にも直面しました。孤児院を訪れた際、「夢はキャビンアテンダントだけど、お金がないからとても無理。家族を助けたいから先生を目指すの」とまだ小さなの女の子が打ち明けてくれたそうです。これも笑顔で。ホスピタリティにあふれ、感謝と笑顔を忘れない人々。そんな人たちのために人生を懸けて成長していこうと決めた瞬間でした。

 

そして彼女が出会ったのが、フィリピンのNGO「Gawad Kalinga(※)」。Gawad Kalingaは「to give care」という意味です。ここでは、「誰一人後ろに置いていかない」「汗を一緒に流す」などを方針に掲げ、コミュニティ開発による貧困解消を図っています。例えばこんなやり方です。土地を不法占拠して生きるスラムの人々が協力し、Gawad Kalingaの指導のもと家を建てる。その過程で育まれる共同体意識や労働の意義の発見を通して、貧困にある人々の自立を目指しているのです。

 

NGOに出会い、そしてスラムの人々の姿を追いながら、大野さんは気付きました。「コミュニティづくりは一過性のものに終わらないから価値がある」と。募金や物資の支援も1つの方法ですが、それと違って継続的に効果を上げるのは、人々が自立するための仕組みづくりにあるのでしょう。そんな思いを胸に、彼女は今回の留学でも、その「Gawad Kalinga」でノウハウを学ぶべく、インターンやボランティア参加に取り組んでいます。

 

 

厳しい環境の中だからこそ、自分を成長させる気付きに出会える

 

彼女の目標は、貧困層の自立を目指したソーシャルビジネスの立ち上げの中で、スラムの人々にメンター(助言者)として寄り添うことです。これからはコミュニケーションをさらに密にすることで、人々の本音に向き合い、スラムで生きる現実に触れるつもりだそうです。今回のトビタテの留学では、フィリピンのコミュニティーで現地の人と生活を共にし、日本人同士で群れてしまう状況も極力減らすのだとか。人々の体温がわかるぐらい近くなったとき、彼らのヤリタイコトが何なのかがわかるはずだと、彼女は考えているのです。

 

彼女の夢は、自立を支援するソーシャルビジネスの展開です。いずれ世界各地で貧困を解消していく人材になることを目指します。今回のフィリピンでの挑戦は、その歩みの一つです。

 

大野さんは言います。「留学って欧米だけじゃないと思うんですよね。アジアへの留学にも固有の魅力が絶対ある」。スラムに住む人々の自立を図る彼女は、同時に自分自身の自立もこの留学で学んでいます。

 

アジアでの暮らしは、欧米と比べ、住環境のインフラが整っておらず、生活の中には治安面や衛生面の不安、それこそ虫との戦いもあります。そんな苦境を笑って乗り越えるタフさが養われるからこそ「自立」ができるのかもしれない。そんな彼女の思いは、同じフィリピンで、初めての海外生活を送る僕には大きく頷けます。

 

そしてもう一つ。「日本と比べると劣悪な環境の中で、懸命に学ぼうとする同世代の存在に、強く引き付けられる」と彼女は言います。貧困を脱け出そうという思い、自由への渇望は、私たち日本人には想像もつかないもの。そんな彼らとの対話が、自分を大きく揺るがすきっかけになったそうです。

 

「費用が問題で諦めがちな留学だからこそ、比較的コストの低いアジアへ目を向けてほしい。そこにはきっと他では得られない学びがあるはずだから」。大野さんだけでなくこの僕も同感です。あなたの留学先に、ぜひアジアも選択肢に入れてみませんか。

 

今回のオススメ

 『前へ ! 前へ ! 前へ ! ― 足立区の落ちこぼれが、バングラデシュでおこした奇跡。』税所篤快(木楽舎)

現在も発展途上国で映像授業を広めている「E-education」を創業に至るまでの税所篤快氏の実話に基づく奮闘記です。光景が目に浮かぶように読みやすいので、高校生の間にぜひとも読んでおいてほしいです。

ポイントは落ちこぼれだった税所氏が世界を変える一歩を踏み出している点です。「世界を変えるなんて……よっぽどの天才しかできないんだろう」なんて思っている人は多いのではないでしょうか。

この本から、とにかく一歩を踏み出す“勇気”が大事なんだ!と気付かされます。

何かを変えたい!とか世界に羽ばたく!と考えている人はもちろん、日常に潜むささいなことへのエンジンになる1冊です。

[出版社のサイトへ]

 

<前回の記事を読む>

第1回 「勇ましい、高尚なる生涯こそが後世への最大遺物である」

~内村鑑三の言葉に後押しされて、留学を決意

第2回 今この瞬間に一生懸命打ち込みたいことを、全力で

~高校時代から変わらなかったその姿勢。トビタテ留学JAPANを起業への第一歩に 

第3回 フィリピンレポート 

選挙の日は、黄色い服で出歩くな ~フィリピン大統領選 

第4回 トビタテ留学JAPANって何? 

~本気のヤリタイコトを、社会総がかりで応援する「トビタテ留学JAPAN日本代表プログラム」