トビタテ生のヤリタイコト日記

~こんな本が僕たちの背中を押してくれた

下山明彦くん東京大学文科I類2年)

第14回 「なぜ『こんな人』が国のトップになったのか」と言うのはたやすいけれど~CNNフィリピン支局訪問

世界最大規模のニュース専門放送局、CNNフィリピン支局で。左端がArmie Jarin-Bennettさん
世界最大規模のニュース専門放送局、CNNフィリピン支局で。左端がArmie Jarin-Bennettさん

「なぜって? そう思うのは、今確かにある『不安』にあなたたちが気付いていないからよ」。過激な言動で知られるロドリゴ・デュテルテがフィリピン大統領に選ばれたことを尋ねた僕に、Armie Jarin-Bennettさんはそう答えました。彼女は、世界最大規模のニュース専門放送局、CNN(Cable News Network)のフィリピン支局でナンバー2を務めるジャーナリストです。

 

市長時代に記録的好況を実現させた手腕を持ちながら、犯罪抑止のためには麻薬密売人の殺害までも容認する姿勢のデュテルテ。極端な政治姿勢に対しては「フィリピンのトランプ」との揶揄も聞こえてきます。「なぜこんな人が国のトップになったのか?」。そんな僕の問い掛けに、Armieはこう続けます。「貧困や閉塞感は、この社会に澱(おり)のようにたまっているの。そこに現れたロドリゴに人々は飛びついた。これはフィリピンに限った話ではないわ」と。

 

米国のトランプ現象もイギリスのEU離脱も、その延長線上にあると彼女は言います。いわゆる「知的」な「上流階級」にとっては、不自然で納得のいかないことかもしれない。アッパーな層からは「民主主義が崩壊しかかっている」との批判もある。でも、そんな知的な人々に見えていない社会不安は確実に存在し、不安を抱えている人たちを認識できない、あるいは理解しようとしない態度は、社会の分断を生みかねない、そう危惧しているのです。アフリカや香港の現場に立ってきたArmieの言葉には説得力がありました。

 

 

考え続けなければ、政治的強者の言いなりになってしまう

 

そんな指摘を受け、感じたことを書きます。僕たちは上流階級ではないけれど、無意識ながら「知的」なポジションに立ちがちです。そうした教育を受けてきたし、世の混沌をこの眼に映してきていないのです。だからこそ、デュテルテ的な事象をこともなげに切り捨てるのは思考停止であり、逆に怖いことなんでしょうね。「なぜ、彼が求められるのか」「なぜ、混沌は生まれるのか」。客観的な事実に即して、考え続けることが大事なんだろうな、そうでないと強者の側に安住してしまう…。そう思ったのです。

 

こじんまりした東京のCNN支局とは違い、ビルの複数フロアにいくつものスタジオが居並ぶCNN Philippines。アメリカで制作されたニュースを伝えるだけでなく、フィリピンのみで放送される番組も数多く作られていました。デュテルテの政策の分析もあれば、軽妙なトーク番組もあり、フィリピンの実情やニーズに沿っていました。大半の人が英語を解さない日本との違いが、充実したラインナップに表れていました。ジャーナリストの仕事に少し惹きつけられた、今回の訪問でした。

 

今回のおススメ本

『中国4.0 暴発する中華帝国』

エドワード・ルトワック 奥山真司:訳(文春新書)

圧倒的な経済成長を果たし、アジア諸国に大きな影響を与える中国。日本や僕が訪れたフィリピンやインドでも、国際関係を語るにあたり「中国」は必ず話題に上ると言っても過言ではありません。その中国が、この数十年間どのような方針のもと外交を行ってきたのか。その戦略の変遷についてわかりやすくまとめられた本です。

[出版社のサイトへ] 

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