トビタテ生のヤリタイコト日記

~こんな本が僕たちの背中を押してくれた

下山明彦くん東京大学文科I類2年)

第15回 スラムの人々に労働や協働の意義を教えて自立を目指すフィリピンのNGO

Punon村でのワークショップ
Punon村でのワークショップ

フィリピン最大のNGOに「Gawad Kalinga」があります。Gawad Kalingaが手がける事業は幅広いですが、通底するテーマとして挙げているのが、「本当の意味での自立」です。募金、寄付金を収入源として貧しい人々にそれを分配する形のNGOが多い中、Gawad Kalingaは彼らが自分自身の力で生計を立てることができるように支援をします。

 

平屋が立ち並ぶスラムの真ん中に、大きさは小学校の校舎ほどで4階建てのアパートが建っています。ただでさえ周囲の建物と比べて異彩を放っていますが、より驚くのは、住民自身で0からこのアパートを建てたことです。

 

もともと「スラム」の定義は、「住居として不正利用されている土地」のことです。Gawad Kalingaはそんなスラムの土地を法的な手続きを踏んで買い取り、そこに新しく住民たちで家を立てることを提案します。もちろん並大抵のことではありません。それでも自主的に家を建てることを目指した人たちが、将来的にアパートに住む活動を通して、労働の意義や協働することの大切さを学んでもらうのがGawad Kalingaのねらいであり、支援に依存してきたスラムの人たちが「自立」する第一歩なのだそうです。

 

Gawad Kalingaのコミュニティ「GK ロレガ」のまとめ役でもあるアテエレンさんは家を建てていた当時のことを思い出し、「途中で抜けていく人もいて本当に辛かったけれど、最後までやり抜いたときは号泣する人もたくさんいた」と語っています。

 

与える人と与えられる人という構図にとどまることなく、人々に寄り添い、何が必要なのかを見極めることの大切さをGawad Kalingaの活動は物語っているのではないでしょうか。

 

 

Punon村でのワークショップ

 

Gawad Kalingaが人々の自立を目指し、形成したコミュニティはフィリピン全土に存在しています。

 

今回はその中の一つ、レイテ島に存在するGK Punonと言われるコミュニティを訪問しました。ここでは、Gawad Kalingaでインターンを行っている人と共同でワークショップを開催しました。目的は、Punon村の方々に日本の文化を紹介することと、コミュニティのあり方を考えてもらうことです。

 

到着してすぐに振る舞われたのは近くの海で収穫された魚介類です。Punon村の多くの男性は漁師として働いており、この日も朝の5時から漁に出かけていたそうです。ココナッツミルクを原料にしたスープとともに煮込まれたエイやイカなどをいただきました。

 

その後は、日本文化の紹介です。日本が世界地図のどこにあるのか、国旗はどれか、妖怪ウォッチはMade in Japanかなどのクイズを出した後は折り紙の紹介です。フィリピンでは”Ninja Star”と呼ばれている手裏剣の折り方を教えました。NARUTOが世界で大ヒットしていることもあって「忍者」や「手裏剣」はやはり大人気でした。

 

そして夕食は僕たち日本人が「お好み焼き」を振る舞いました。枝を集めて火をおこし、大きな中華なべだけを使って悪戦苦闘を繰り広げた結果、なんとか完成。「いただきます」を唱和して、美味しく食べることができました。少し意外だったのは、フィリピン人にとってお好み焼きはお菓子みたいだということ。お好みソースは少し甘かったようで、「これはPancakeなの?」と聞かれることもありました。

 

 

自分たちに何ができるかよりも、彼らが何をしたいのかを引き出すこと

 

彼らとの2日目のワークショップでは、これからどのようなコミュニティを築き上げていきたいかを話し合いました。

 

場所は、Punon村の中心にあるデイケアセンター。みなが集い、活気のある場所になるようにとの願いを込めて、村人が3年前に建てたのです。ただ、残念ながら、今は活気が失われ、使われることも少なくなってきました。初心に帰ろうと、村の人が一同に会したのです。

 

ディスカッションのトピックは2つ。この村の「売り」を発信するにはどうすればいいか、そして、デイケアセンターの再活用策です。ゼミなどで、いわゆるグループディスカッションに慣れている僕たち。ビジネス思考や論理的思考をある程度身につけてきたので、十分貢献できるだろうと踏んで議論に臨みました。

 

そうした観点では、一定の貢献はできたと思います。でも、何より難しく、重要なのは、同じ視線に立つことでした。これまで送ってきた人生そのものが、まるで違うのです。ここで僕たちが何をできるかよりも、彼らが何をしたいのかを引き出すことこそ、何より大切なのでしょう。

 

 

一人の老人の言葉が空気を変えた

 

そんな思いで続けたワークショップでしたが、タガログ語と英語が行き交い続けるストレスもあり、みんなの顔に疲れが見え始めた頃。一人の老人がおもむろに口を開きました。「デイケアセンターには、村のみんなと夢が集まるはずだった」「ここを、子どもたちの未来が開ける場所にしたかった」。しみじみと語る彼の言葉は、間違いなく村人の心に沁みこんでいました。その重みはみなを動かすのではないか、と感じました。

 

村人みなが力を合わせ、援助をあてにすることなく、本当の意味で自立する。難事業であるのは間違いありません。それでも、彼らなら少しずつ道を切り拓いていけるはずです。そのきっかけになれたとすれば、これ以上嬉しいことはありません。

 

今回のおススメ本

『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』

ジュリア・キャメロン 菅靖彦:訳(サンマーク出版)

こんなことがしてみたい! ふと思いついたヤリタイコトも、周囲の目を気にしたりめんどくさくなったりして結局やらずじまい。誰にだってそんなことがあると思います。そんな「あるある」を積み重ねて人生を終わるより、心の中のアーティストの声に従っていろんなことに挑戦してみるべき。そう強く書かれています。そのためにはどうすればいいかも踏まえて、この本はみなさんの背中を強く押してくれると思います。

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