トビタテ生のヤリタイコト日記

~こんな本が僕たちの背中を押してくれた

下山明彦くん東京大学文科I類2年)

第20回 ヴィパッサナー瞑想(2)いよいよ瞑想体験! 「ブッダの教えを身体を通して理解する」とは…?

携帯やカメラはもちろん、話すのも目を合わせるのもNGが1日10時間以上

インド人スタッフの方と
インド人スタッフの方と

いよいよコルカタの空港へ降り立ち、瞑想センターを目指しました。瞑想センターからの情報は、メールで送られてきた手書きの地図しかありません…。

 

道が全くわかっていないタクシー運転手と運賃をめぐって交渉を繰り返しつつ、やっとのことで瞑想センターへ到着しました。簡単な質問に答え、登録をすませ、いよいよ明日の朝から本格的な瞑想が始まります。

 

他の参加者を見ると、ほとんどがインド人で、明らかに色が白い僕はやっぱり目立つので、「どこから来たの?」「なんで参加しようと思ったの?」などの質問が矢継ぎ早に飛んできます。今回が初めてという人もいましたが、中には今回が10回目というツワモノもいます。あとでその人の家の本棚を見せてもらいましたが、瞑想関係の本でいっぱいになっていました。

 

いろんな人と話し、たくさん友達ができたとわくわくしていたところ、鐘の音とともに急にみんなが無言に。初日ですが、1時間ほどの簡単な瞑想をしました。瞑想が始まると、完全に集中するために話すことも目を合わせることも禁じられます。ケータイやカメラ、筆記用具もスタッフに預けて、瞑想に臨むのです。

 

そして、次の日。なんと起床は朝の4時です。瞑想センターのスタッフが鈴を鳴らしながら各部屋を回ります。眠い目をこすりながら瞑想するためのホールへ。ひんやりとした空気に満ち、音のないホールは、幻想的な雰囲気です。僕が到着した頃にはほとんどの人が集中して瞑想をしていました。

 

その雰囲気に圧倒されて、すっかり眠気も覚めてしまいます。そして、自分の席を探してみると、偶然にも僕の席は瞑想指導を行う先生の真正面に。この後10日間は、ふと顔を上げると先生と目が合ってしまうという、極めてつらい状態で瞑想することになってしまいました。

 

1日のスケジュールは

午前 4:00 起床のベル

4:30 - 6:30 瞑想

6:30 - 8:00 朝食と休憩

8:00 - 11:00 瞑想

11:00 - 13:00 昼食と休憩

13:00 - 17:00 瞑想

17:00 - 18:00 お茶と休憩

18:00 - 21:00 瞑想

21:00 - 21:30 先生に対する質問時間

21:30 就寝

 

1日10時間以上は瞑想の時間です。初日が終わって、これが10日間続くのか、と絶望感に打ちひしがれました。しかし、瞑想の方法も今まで経験したことのないもので、知的好奇心を満たしながら楽しめたのも事実です。

 

精神と身体のありようを見つめるため、ヴィパッサナー瞑想の修行は2つのプロセスに分かれています。1つ目は、アーナパーナーという瞑想法で、これは10日間のうち、3日目まで行われます。することはいたってシンプルで、ひたすら呼吸をし続け、その際に感じる感覚を意識し続けます。

 

上唇から鼻までの三角形に意識を集中し続け、それらを通る自分の呼吸をひたすら感じるのです。3日間、徐々にその範囲を狭めて、感覚を鋭敏にさせていきます。飽きるほどやり続けた結果、かなり集中力が身についたような気がします。

 

これが終わると、いよいよヴィパッサナー瞑想です。こちらもいたってシンプルで、頭の先から足の先まで、自分の身体の表面の感覚を意識して移動し続けるというものです。これをひたすら繰り返し、身体のどの部分も感覚(先生はsansationと呼んでいました)を感じられるようにするのです。ある時は頭のてっぺん、ある時はひざの裏、ある時はつま先。ありとあらゆる場所の感覚を意識するのです。この「感覚」というのは、熱さや冷たさ、むずがゆさや痛みなど本当に全ての感覚を指します。このような「感覚」はひたすら意識を集中していれば身体のどの部分でも感じることができるようになります。このように身体感覚を鋭敏にさせていくことによって身体の「律動」(vibration)を知覚することを目指します。

 

身体感覚を研ぎ澄ますことで「無常」を体感する

そもそも律動とは何なのか。それを説明するには、仏教の「無常」という概念にふれる必要があります。全てのものが移り変わる。同じように、僕たちの身体も一瞬一瞬で古い細胞が死に、新しい細胞が生まれるという変化をしています。このような変化によって、同じように見えても実は同一性を保持していないというわけです。

 

ヴィパッサナー瞑想では、身体感覚を通して「無常」を理解することを目指します。例えば、どこかにかゆみを感じたとしても、そのかゆみをずっと観察し続けると、いつかそれが消えていくことがわかります。これと同じように、全ての感覚は一回性のもので一瞬一瞬変化している。それが「律動」なのだそうです。

 

このように、ブッダの教えを身体を通して理解するのです。話を聞いたり本を読んで頭で理解したりすることを超えた理解を目指すことがこのヴィパッサナー瞑想の目的です。理論を重視する「西洋」と対比される、実践を重んじる「東洋」。ヴィパッサナー瞑想は、この有名なフレームワークの代表例なのかもしれません。

 

今回のおススメ本

『歴史とは何か』

E.H.カー、清水幾多郎:訳(岩波新書)

「歴史の解釈は現在の諸状況の中で過去に対して目を向けることによって生成されるものであり、現在と過去は相互に依存した関係にある」と語る筆者の言葉は、歴史とは解釈するものとされるものの対話の産物であるという一見当たり前かもしれない事実を、国際政治学の見識を元に語りかけてくれます。大学での講義を本にしたこともあり、比較的読みやすいのではないでしょうか。

[出版社のサイトへ]

 

<前回の記事を読む>

第19回 ヴィパッサナー瞑想(1)~インドで10日の瞑想体験

第18回 日本で介護士として働くには壁がある

第17回 出稼ぎ、日本人男性との結婚。日本語を習うフィリピン人

第16回 セブでの日本語指導ボランティア

第15回 スラムの人々に労働や協働の意義を教えて自立を目指すフィリピンのNGO

第14回 「なぜ『こんな人』が国のトップになったのか」と言うのはたやすいけれど~CNNフィリピン支局訪問

第13回 フィリピン人の先生からスカイプで英会話を学ぶ

~フィリピンも日本もHappyになるビジネスの創業者に聞く

第12回 フィリピン・マニラのスラム街 「厳しい環境の中でも笑顔」の陰にある現実を見た

第11回 フィリピンの学生の一言から考えたこと

~都市は発達しても教育には課題も

第10回 新興国でのボランティアで学んでいること

~共感も違和感も含めて自分を変えてくれる

第9回 トビタテに合格するために その4

個人面接グループディスカッション

第8回 トビタテに合格するために その3

応募書類をめぐって~留学計画書作成のコツ

第7回 トビタテに合格するために その2 

いちばん大事なのは募集要項を読むこと

第6回 トビタテに合格するために

~「ヤリタイコト」をとことん考え、わかってもらうためにすべきこと!

第5回 一過性の「援助」ではなく、自立に結び付くコミュニティづくりを目指してフィリピンで奮闘 ~トビタテ生の挑戦 その2 大野雛子さん(東洋大学文学部3年)

第4回 トビタテ留学JAPANって何? 

~本気のヤリタイコトを、社会総がかりで応援する「トビタテ留学JAPAN日本代表プログラム」 

第3回 フィリピンレポート 

選挙の日は、黄色い服で出歩くな ~フィリピン大統領選 

第2回 今この瞬間に一生懸命打ち込みたいことを、全力で

~高校時代から変わらなかったその姿勢。トビタテ留学JAPANを起業への第一歩に 

第1回 「勇ましい、高尚なる生涯こそが後世への最大遺物である」

~内村鑑三の言葉に後押しされて、留学を決意