高校ビブリオバトル2016
食べるだけじゃない!きのこの深くて広くて神秘的な世界!
『きのこの呼び名事典』大作晃一
繁森有紗さん(茨城・茗渓学園高校2年)

世界で一番大きな動物はクジラ、植物はメタセコイアですが、世界で一番大きな生き物は植物でも動物でもありません。きのこです。ナラタケの仲間たちが世界で一番大きな生き物です。
ナラタケは細い糸状の菌糸というものでできています。アメリカの一つの山で、ナラタケから伸びている菌糸が広がっていて、その面積はなんと東京ドーム約600個分。こんなすごーく神秘的な生き物がきのこです。
写真も、詳しくて面白い解説もすべて行っている著者の大作晃一さんは、きのこの魅力に憑りつかれてしまった一人です。元々はサラリーマンだったのですが、趣味のオフロードバイクで山を散策しているときに足元のきのこに気付いて以来、きのこの魅力に憑りつかれ、2013年、ついにフリーのカメラマンになって、きのこや植物の本を書いています。代表作は小学館の図鑑『NEO』。これの花の図鑑の写真、ほぼすべてを担当しています。
この本の特徴は、きのこの全体像がわかる、きのこの白ヌキ写真と、きのこがどこに生えているのかがわかる生態写真がどちらも載っているということです。このようなきのこ図鑑は他にはありません。
中身を少しだけ紹介しましょう。ベニテングタケというきのこは、おそらく誰もが一度は見たことがあるはずです。スーパーマリオブラザーズの、あのきのこは、ベニテングタケをモデルにしていると言われています。
大作さんは、このベニテングタケをなんと、毒抜きをして食べたことがあると書いています。ベニテングタケは恐ろしい毒があるきのこなんです。それを毒抜きをして食べると美味しいという、にわかには信じがたいうわさがあるそうです。このように大作さんのきのこに関する面白いお話も存分に載っているのも魅力です。
タマゴタケというきのこは、小さい頃にたまごのような姿をしていて、そこからきのこが出てくるところからタマゴタケという名前をつけられました。このきのこは赤いですが食べられます。赤いきのこは、すべて毒きのこというわけでもないのです。ただ、タマゴタケは本当に先ほどのベニテングタケとよく似ているので、もし道端で見つけても絶対に食べないでください。
エノキタケは、皆さんが知っているのは真っ白なエノキタケだと思いますが、野生に生えているときは白ではなく、茶色の姿をしています。このように皆さんが思っているのと違うきのこの姿はたくさんあります。キヨタケというきのこはなんと光ります。こんなふうに、きのこって皆さんの想像を超えるものなんです。
きのこの楽しみ方は「食べる」だけではありません。「見る」こともきのこの楽しみ方です。大作さんの美しいきのこの写真が一番の魅力ですが、大作さんの臨場感あふれる楽しい解説も負けないくらい魅力的です。この本の全85種のきのこ、どれにも魅力があります。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>
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繁森さんmini interview

フィクションではファンタジーとミステリー、ノンフィクションでは自然科学が好きです。好きな作家は、東野圭吾、上橋菜穂子、はやみかおる、辻村深月。

もともと動物が好きだったので、小学2年生のときに「マジック・ツリーハウス」シリーズに出あい、動物のイラストがかわいくて夢中になって読みました。本格的に本を読み始めたのはこの本が最初です。

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