高校ビブリオバトル2016

「七」は「なな」?「しち」? 著名な翻訳家のセンスが凝縮

『日本語は天才である』柳瀬尚紀

小林美友さん(石川県立金沢錦丘高校2年)

『日本語は天才である』(新潮文庫刊)
『日本語は天才である』(新潮文庫刊)

まいどさん、金沢から参りました、小林美友と申します。

 

「まいどさん」とは金沢弁で「こんにちは」という意味です。なぜ私が方言で挨拶をしたのかというと、今回紹介する本には、著者の柳瀬尚紀さんが出身地である北海道根室市の根室弁、ネイティブな根室弁でサーっと書いてあるページが4ページもあるからです。方言も日本語の魅力の一つであると紹介してあったので、私ももう少し金沢弁で自己紹介させていただきます。

 

「えんとぉんねぇ、金沢から来たぁ、小林美友ってゆぅんやけんどもぉ、こぉんなかさだかな場所に上げさせてもろて、きのどくな。こぉんなに会場にたぁんと人がおいであそばせて、いやんなる、うち。緊張しとっけど、だらこといい本やさけ、あんたら『日本語は天才じゃある』読んでみまっしね」

 

この本には、タイトル通り「日本語は天才である」ということが紹介されています。著者、柳瀬尚紀さんがただ者ではありません。日本でも有名な翻訳家で、代表作には『チャーリーとチョコレート工場』『不思議の国のアリス』。遊び心の多い本をよく翻訳されています。

 

そして、この本には、そのセンス、面白さ、全てズンと濃縮されているわけなんです。面白さというのは天才であるだけではなくて、その証明方法とか、日常の話とか所々にあらわれています。

 

例を挙げると、1,2,3,4,5,6、次の数字は「なな」ですか?「しち」ですか?

 

これは、漢字の音と訓というものを扱う際に出された例で、音が「しち」で、「なな」が訓です。そして柳瀬さんは、「七」という漢字を使った言葉をひたすら2ページ書きました。そして「なな」派と「しち」派を論争させます。「親の七光り」を「しちひかり」とは言わないし、「七五三」を「ななごさん」とも言わないということも取り上げていました。こうして考察しながら話が進んでいくわけで、結局のところ、1,2,3,4,5,6の後は「しち」なのだそうです。

 

私はこの本がとても面白かったのですが、少し不満があります。というのも、この本では書き言葉としての日本語は天才であるということがバッチリ証明されています。でも、こうやって私が話している話し言葉としての日本語についてはあまり書かれていません。先ほど話した方言はもちろん天才です。しかし、私の好きな漫才や落語など、リズミカルな言葉についてはあまり取り上げられていません。

 

ですが、この柳瀬さんにはもう不満を言うことはできません。なぜなら2016年の7月にお亡くなりになったからです。だから私は不満は言えませんが、悔しいんですけど、こんな不満を考えることができたのは、この本が日本語というものがいかに奥深いかということを紹介していたからです。

 

小林美友さん
小林美友さん

日本人は会話をするときに、もっと情緒的にしゃべる必要があると思います。つまり、センスというものが問われるんです。『日本語は天才である』を読めば、もっと自分たちの言葉というもの、書く言葉、話す言葉、そして伝える言葉の奥深さがわかると思います。この本は、日本人が一度読むべき本であるのです。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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