高校ビブリオバトル2016

顔に障害のあるオーガストくんと出会い、周りの人はどう感じたのか

『ワンダー』R・J・パラシオ 中井はるの:訳

野村由稀乃さん(岡山県立倉敷商業高校2年)

『ワンダー』(ほるぷ出版)
『ワンダー』(ほるぷ出版)

これは普通なのに普通ではない男の子のお話です。主人公の男の子は10歳のオーガストくん。彼は顔に障害があります。目は普通の人の位置より3cm下、頬の中心辺りについています。片方の目は眼球が入りきらずに飛び出してしまっている。鼻も普通の人より不自然に大きくて、睫毛も眉毛もない。あるはずの場所に耳がなくて、そこが凹んでしまっているという、ちょっと特殊な顔をした男の子です。

 

彼は10歳になるまでに手術を27回も受けています。10歳になって体もちょっと丈夫になったので、彼が学校に行くということを舞台にして書かれています。

 

その学校で、彼は、触ったら菌がうつると言われたり、特殊な顔をしているので初めて会う人に「ハッ」と息をのまれたりして、いじめられたりします。けれども、大事な友達ができたりして、どんどん強く逞しく成長していきます。

 

この本は、全世界で300万部も読まれています。その理由を考えてみました。

 

この本は主人公オーガストくんだけの視点ではなくて、オーガストくんを取り巻く人たちの視点でも書かれています。お姉さんの視点、お姉さんの学校の友達から見たオーガストくん、お姉さんの恋人の視点、オーガストくんが通う学校で新しくできた友達の視点。私は、オーガストくんにどうやって接していけばいいのだろう、どうしてあげられるんだろうと考えている周囲の人の視点に感情移入をして読むことができました。

 

この本は、実は児童書です。ですが、私の母もすごく面白かったと話すように、幅広い年代の人が読めると思います。また、私の学校には本を読む人がとても少ないです。ですから、もっと多くの人に本というものの良さを知ってもらいたいのです。この本は、本が嫌いな人、本が苦手な人にも、お薦めできる本なのです。

 

野村由稀乃さん
野村由稀乃さん

この本は最終的にハッピーエンドで終わるのですが、障害をテーマにしているのでただのいい話では終わりません。主人公のオーガストくんからたくさんの勇気やパワーをもらえます。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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