高校ビブリオバトル2016

就活中の主人公を励ます手紙屋との出会いは偶然?

『手紙屋 僕の就職活動を変えた十通の手紙』喜多川泰

宮川悠之介くん(福井県立武生東高校2年)

『手紙屋』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『手紙屋』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

この本は普通の小説とは違った珍しいスタイルが魅力です。就職活動中の主人公と彼を応援する手紙屋、この2人の10通の手紙のやり取りを通してストーリーが進んでいきます。

 

主人公である大学4年生の西山諒太は、就職という大きな壁を前に悩んでいました。将来の安定を選んで大企業に勤めるのか、それとも自分のやりたい方向に進むのか。そんな人生の大きな分かれ道の最中に、諒太は手紙屋に出会います。舞台は「書楽」というブックカフェです。

 

あなたが書楽の常連客だと想像してみてください。いつも座っている席には、たまたま他の人が座っていました。そこで気分を変えて他の椅子に座ってみます。そこには映画のチラシ大の広告があり、こんなフレーズが書いてあります。「はじめまして。手紙屋です。手紙一筋10年、きっとあなたの人生のお役に立てるはずです。私に手紙を出してください」。

 

普通なら、怪しいとかお金を請求されるとか考えてしまいますが、諒太は思い切って手紙を出します。そして4通目の手紙のとき、諒太は大手自動車メーカーの最終面接に臨みます。確かな手応えを感じますが、結果は不採用。落ち込む諒太は、手紙屋に手紙を書くこともできません。

 

こんな時、どんな言葉をかけて欲しいでしょうか。ただ「頑張って」と言われてもやる気は起きないですね。僕なら「放っておいて」って言いたいくらいです。ですが、手紙屋の言葉は諒太を動かします。諒太は手紙屋のあるフレーズに光を見つけるのです。僕もそんな諒太に自分を重ねて、手紙屋の言葉にパワーをもらいました。手紙屋の返事には、読んだ人を前向きにしてくれる素敵な言葉がたくさんちりばめられているのです。

 

宮川悠之介くん
宮川悠之介くん

そんな不思議な力を持つ手紙屋とは、いったい誰なのでしょう。諒太は、何通目かの手紙の中の「諒太応援団の一人、手紙屋より」という言葉に違和感を覚えます。「自分のことを知らない人が、こんな書き方をするのだろうか」と、手紙屋の存在を身近に考え始めるのです。正体はあの人、いやこの人…。点と点である登場人物たちが、手紙屋をターミナルとしてやがて線でつながり、最終的には一つの大きな輪になります。手紙屋との出会いは本当に偶然?それとも必然?

 

誰もが壁にぶつかります。そんな時はこの本を読んで、アナログな手紙の中にあるゆったりとした時間の流れと言葉の力をぜひ感じてください。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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