高校ビブリオバトル2016

表紙から想像できない、復讐の物語

『たったひとつの、ねがい。』入間人間

青戸有羽くん(三重県立四日市四郷高校3年)

『たったひとつの、ねがい。』(メディアワークス文庫)
『たったひとつの、ねがい。』(メディアワークス文庫)

著者の入間さんは2007年にデビューし、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(みーまー)というライトノベルを書きました。これがライトノベル界で物議を醸しました。ライトノベル界では、剣と魔法モノといったファンタジーやラブコメなど、読書が苦手な人でも楽しめるものが一般的なのですが、『みーまー』では人間の狂気がえぐり出されるように描かれていたのです。そのため、10巻まで続いて完結し、さらには実写映画化もされるなど、ライトノベル界では異例の扱いを受けました。

 

そんな作品を書かれる入間さんですが、最近では単発の青春小説を書かれており、本書もその一つです。

 

タイトルを見てください。『たったひとつの、ねがい。』とは、どう考えてもいいお話に思えます。ハッピーな展開しか想像できません。表紙のイラストはすごくかわいくて、カレーを食べる女性という日常的なものです。

 

そこで、ハッピーな展開を期待しながら本書を購入したのですが、僕はたったひとつだけ見落としていました。それは、帯に書かれているコメントです。

「この物語に、同情の余地なんかない」。

 

この本のタイトルと表紙に惹かれて読む人、覚悟しておいてください。逆に、帯のコメントに惹かれた人、ぜひ読んでください。あなたのための本です。

 

青戸有羽くん
青戸有羽くん

25歳の主人公・拓也は社員寮に住んでおり、年下の彼女と半同棲しています。そして、そろそろ結婚しようかな、と考え出すところで物語が始まります。しかしそれは導入にすぎません。この物語は、彼女とすべてを奪われた主人公の復讐の物語です。

 

たったひとつのねがいとは何なのか。気になった方はぜひ読んでみてください。僕からヒントと感想を一つだけ。食べ物の恨みって、恐ろしいです!

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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青戸くんmini interview

好きなジャンルはミステリー(特に日常ミステリー)。好きな作家は、米澤穂信、入間人間、我孫子武丸です。

 

「守り人」シリーズ(上橋菜穂子:著)が好きでした。

 

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