高校ビブリオバトル2016
人生を悲観し寿命を売った男は、残り3ヶ月をどう生きるのか
『三日間の幸福』三秋縋
目谷晴斗くん(北海道函館西高校2年)

例えば、アルバイトで失敗した時、部活で結果を残せなかった時、あるいは過去のいじめられていたことを思い出した時。そんな憂鬱なことを思い出すと、僕は必ずこの本を読みます。『三日間の幸福』です。
著者の三秋さんは、もともとネット小説を書いていて、それが有名になって書籍化されました。この人の何よりの特徴だと思うのは、絶望に寄り添ってくれるところです。今回、三秋さんの作品の中で『三日間の幸福』を選んだのは、この本がもっとも僕の絶望に寄り添ってくれて、前向きにさせてくれる本だからです。
主人公はクスノキという大学生で、とても嫌な奴です。周りのことを常に見下していて、「いつか自分は、お前らより立派な人間になってやる」と思っています。でも現実は、孤独で、親からも愛想を尽かされていて、お金の援助もしてもらえないから、とにかく貧乏です。そんな人生を悲観したクスノキが、ある店を訪ねるところからこの物語が始まります。
その店とは、自分の寿命を売ることができる店です。クスノキは人生の全てを悲観しているので、自分の寿命を売り払おうとします。彼が売ろうとした残りの人生30年間は、最低価格の30万円でした。一般的なサラリーマンの生涯賃金が2億円から3億円ですから、これは一般的に考えてもかなり低い金額だと思います。
クスノキはその値段を聞いてますます悲観し、こんな人生なら全部売り払ってしまおうとしますが、さすがに未練があり、3か月間だけは残します。その3か月をどう過ごそうか、という時にある女の子が訪ねてきます。それがヒロインのミヤギです。
この女の子は、寿命を売って何も怖くなくなった人が犯罪に走ってしまう可能性を考慮して、寿命を買い取る店からクスノキを監視するために派遣されてきました。この女の子はとにかく可愛いのです。淡白な中にどこか暖かさがあるのです。物語はその二人の共同生活が描かれます。

序盤はとにかく悲惨です。これまで自分が心の支えにしてきた幼なじみから裏切られ、親友からは「お前なんか全然親友だと思ってなかった」と言われ、本当に読んでいて死にたくなるくらいでした。でも中盤から、大きく変わります。どう変わるかというと、美しいのです。
どう美しいのかはうまく説明できませんが、俺は物語全体が美しいと思います。一文一文、一文字一文字がとても美しく感じます。その美しさを、味わってみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>
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目谷くんmini interview

好きなジャンルは青春小説。好きな作家は三秋縋や河野裕、入間人間や橋本紡など。

三秋縋さんの本を読むことで、絶望の中の希望を知った。それが今僕の人生にいろんな影響を与えたと思う。

『秒速5センチメートル』(新海誠著)
中学生に1回読んでバッドエンドだと思っていたけど、高校生になっていろんな経験を積んでから読むことで、ハッピーエンドなんじゃないかなって思うようになった。

哲学を扱っている本が読みたい。