高校ビブリオバトル2016

草食系男子必読!平安時代の恋愛物語に学ぼう

『竹取物語・伊勢物語』北杜夫・俵万智

能美寧々さん(秋田県立秋田南高校1年)

『竹取物語・伊勢物語』(講談社)
『竹取物語・伊勢物語』(講談社)

草食系男子とは、恋愛に関して奥手な男子のことで、最近、そのような奥手な男性が増えているということです。去年流行ったドラマの『逃げるは恥だが役に立つ』に登場した主人公もかなりの草食系男子でした。しかし、恋愛が得意になりたいと考えている草食系男子もいるはずであり、そのような方に恋愛の指南書としてお勧めしたい本があります。その本は、千年以上も昔の平安時代に書かれた、和歌を中心に話が展開される『伊勢物語』です。実はこの『伊勢物語』からは現代の恋愛にも通じるありがたいアドバイスがたくさんもらえるのです。

 

例えば、「初冠」というお話があります。主人公は、成人したばかりの若い男性です。男性は、ある旅の道すがら、美しい姉妹に一目惚れをします。どうにかして自分の気持ちを伝えたいと思った男性は和歌を書こうとしますが、和歌を書くための便箋を持ち合わせていませんでした。でも、男性は諦めません。そこで、男性は自分が着ていた狩衣という着物の袖を切って、そこに和歌を書きつけて送ったのです。何とも雅で大胆な行動だと思いませんか。また、この物語からは、素早い行動力と勇気が必要だということもわかるのです。

 

もちろん、この物語は草食系男子だけでなく、女性にもお勧めの本です。『伊勢物語』は短編集のような形を取っているので、話によっては身分違いの恋に苦しんだり、一途に一人の女性を思い続けたり、プレイボーイだったりと、様々なタイプの男性が登場します。最初はその男性の恋模様をただ見ているただけなのが、読み進めていくと自分がまるで男性たちと和歌を交換して、恋の駆け引きをしているような感覚になるのです。

 

現代の男性の多くが草食系男子と例えられるのだとすれば、ちょっと危険で大胆な平安時代の貴族は肉食系男子とも例えられそうです。そのような肉食系男子との恋愛を疑似体験できるのです。

 

『伊勢物語』は言葉の持つ力の大きさも教えてくれます。『伊勢物語』が書かれた平安時代では、人々は自分の気持ちを、和歌を通して伝えていました。一つひとつの言葉を大切に選び、自分の思いを精一杯込めて送っていたのです。

 

能美寧々さん
能美寧々さん

今の私は友達とのSNS上の会話で言葉を略して使うことがあり、言葉をあまり大切に使えてはいないと思います。それも悪くはないと思っていましたが、この『伊勢物語』を通して日本語の本来の美しさや良さに触れて、もっと言葉の使い方を改めてみたいと感じました。

 

このように『伊勢物語』は、恋愛の参考書として楽しめたり、恋愛を疑似体験出来たり、そして何より日本語の美しさや言葉の繊細さに改めて気付かせてくれる、一冊で盛沢山の本です。『伊勢物語』を読んで平安時代にタイムスリップしてみてください。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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