高校ビブリオバトル2016

文体に注目!読書が100倍面白くなる本の取扱説明書

『文体の科学』山本貴光

小笠原汐織さん(神奈川・聖和学院高校1年)

『文体の科学』(新潮社刊)
『文体の科学』(新潮社刊)

文体というのは文の特徴を表しています。本書の前書きには次のようにあります。

 

「文体というレンズを通してみれば、日常の言葉が特別なものに、変哲もない風景がワンダーランドに一変するはずだ」。

 

本書は様々な文体を紹介しています。対話の文体、法律の文体、科学、辞書、批評、小説の文体、他にも数式や映画の字幕などの文体も紹介しています。この本は、まさに本が100倍面白くなる取扱説明書です。そのトリセツの一部をご紹介します。

 

まずは、法律に関する文体についてです。本書では、「アクセス制御法」という法律を例として解説しています。法律文書には2つの特徴があると書いています。1つ目は、句読点「、」「。」が少ないこと。2つ目は、「あなた」や「わたし」といった主語が使われないこと。この2つの特徴にはそれぞれ理由があります。

 

法律文書というのはどのような人が読んでも同じ解釈をされなければならない文です。ですから、「、」によって解釈の違いが生じることもあるので、あまり使われないのです。また、一文に対する言葉の説明が長いので、相対的に「。」も少ないのです。「あなた」や「わたし」といった主語が使われないのは、なぜでしょうか。それは本書で確かめてください。

 

法律文書は、どのような人が読んでも同じ解釈をされなければなりませんが、読み手によって異なる解釈でいいものがあります。それは、小説です。

 

例えば、夏目漱石作『吾輩は猫である』では、文体の特徴として、対話文に「かぎかっこ」や「〇〇さんが言った」といった言葉が使われていないということを挙げています。つまり、よくその作品を読まなければ誰がしゃべっているのかわからないのです。

 

小笠原汐織さん
小笠原汐織さん

小説というものは、作家がどのように読者に読ませたいかによって文体のスタイルが変わります。これまで様々な本との出会いがあったと思いますが、本との出会いをもっと素晴らしいものにするためにぜひ文体にも注目してください。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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