高校ビブリオバトル2016

メディアは嘘をつく。どのように付き合ったらいいのか

『世界を信じるためのメソッド』森達也

舟橋令偉くん(三重・青山高校3年)

『世界を信じるためのメソッド』(イースト・プレス)
『世界を信じるためのメソッド』(イースト・プレス)

皆さんは北朝鮮についてどのようなイメージを持っていますか。ミサイル、おばさんのアナウンサーといったイメージを僕は思い浮かべます。しかし、実際に北朝鮮に行ったことはありません。実際に行ったことがない中で、北朝鮮について思い浮かべてくださいと言われたとき、皆さんの頭の中に流れるのは、例えば、ニュース番組などのテレビで見た映像でしょう。

 

そう考えると、テレビはすごいと思います。行ったことのない国でも、テレビ局の人が取材に行き、映像を集め、テレビで放映すれば、私たちは知らない国の情報や見たことのない世界を見ることができるわけです。

 

テレビやラジオ、新聞など、情報を伝えるものを総称してメディアと言います。しかし、メディアはいくらでも嘘をつけるのです。例えばテレビなら、撮った映像をCGや効果音、テロップ、部分的なカットなどでごまかすことができます。

 

そして、いくらでもごまかせるメディアを使っているのが人間です。間違えない人間なんていません。そして、間違えて誤った情報を発信してしまったら、皆さんの思い浮かべる世界も間違ったものになってしまいます。これは、とても怖いことです。皆さんが頭の中に思い浮かべる世界というのは、本当に信じていいものなのでしょうか。考えると、だんだん信じられなくなってきたでしょう。

 

そこで紹介するのが、森達也さんの『世界を信じるためのメソッド』です。森達也さんは映画監督として有名な方ですが、かつてはテレビ局に勤めていました。当時の大きな事件として地下鉄サリン事件があり、森さんはそれを取材するよう上司に言われました。

 

「絶対悪として取材しろ」と言われてオウム真理教の取材に行くのですが、実際に森さんが会った人たちは悪とはかけ離れた優しい人たちだったそうです。それを絶対悪として描くのは無理だと上司に反発した森さんは、テレビ局をクビになりました。

 

そんな過去を持つ森さんが書いたこの本では、前半でメディアについて解説し、後半ではメディアをどのように信じたらよいのかについて書かれています。この本は中学生用に書かれているため、文章がとてもわかりやすいです。また、「メディアリテラシー」などの用語も詳しく解説したり、「中立な報道」の「中立」とは何かといったことも書いてあったりします。

 

また、本の中に何か所か砂時計が描いてあり、「ここでみなさんに30秒あげるので、一緒に考えてみましょう」という部分もあります。このように、本を読みながら実際にメディアについて考えることができます。

 

舟橋令偉くん
舟橋令偉くん

僕はこの本を読んで、身の回りのメディアについて一から考え、いろいろなことに気づくことができました。今はツイッターなどで誰でも発信することができます。情報が氾濫する中、メディアリテラシーを培うことができるこの本は必読の書だと思います。

 

<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>

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