高校ビブリオバトル2016
不死身の錬金術師と双子の姉弟の冒険
『錬金術師ニコラ・フラメル』マイケル・スコット 橋本恵:訳
福田沙織デリシアさん(奈良市立一条高校1年)

「ニコラ・フラメル」といえば、『ハリーポッターと賢者の石』を知っている人はその中の「賢者の石を作った人」として覚えているかもしれません。「錬金術師」というと、『鋼の錬金術師』を思い出す人もいるでしょうか。
この本の主人公は双子の高校生です。この双子の姉弟はサンフランシスコのコーヒー店と書店でそれぞれアルバイトをしていました。そして、弟が働いている書店のオーナーが、ニコラ・フラメルだったのです。昔の人であるため亡くなっているはずですが、歴史的にも、墓を掘り返したら遺体がなかったと言われています。この本ではそんな歴史から「賢者の石を使い、現在も生きている」という設定です。書店では名前を変えて働いていましたが、賢者の石の作り方が書かれているアブラハムの書を書店に隠していました。そこに宿敵であるジョン・ディー博士が現れます。不死身になれる賢者の石をつくろうと、アブラハムの書を奪おうとしたのです。その時、錬金術を使って博士に対抗したため、この人がニコラ・フラメルだったということがわかります。
この物語の中では、人間一人ひとりがオーラを持っています。ニコラ・フラメルたちは、主にこのオーラを使って攻撃をします。双子の姉弟はアブラハムの書に書かれている「素晴らしいオーラを持つ伝説の双子」かもしれない人物でした。ニコラ・フラメルはこの双子を手元に置いておこうとし、彼らを連れていろいろなところを巡って争っていきます。

この本は、何がすごいかというと、登場人物が歴史上に本当にいた人物、もしくは、神話などに出てくる人物だということです。例えば、重要な人物として登場するスカアハは、ギリシャ神話の中で剣や格闘技の技術を磨いた女神として知られています。この本でも、剣や格闘技を使って敵と戦います。ジャンヌ・ダルクもスカーファの親友として出てきますが、歴史上と同じで剣士として戦います。錬金術を皆が使えるわけではないですが、一人ひとりが史実通りの特技を持っていて、それで敵に立ち向かっていくのです。
この本の主人公は高校生なので、共感するところも多く読み進めやすいです。兄弟愛も必見です。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 全国大会の発表より>
こちらも 福田さんおすすめ

『獣の奏者』
上橋菜穂子(講談社文庫)
私が分厚いファンタジー小説を好きになった本でもあり、ニコラ・フラメルを見つけるきっかけともなったこの本は、とにかく構成と描写がすごい!! 私が一番気に入ったのは食べ物の描写と舞台設定です。読んでいてお腹が空いてくるほど美味しそうなのです。設定も、現実にありそうでない世界というのが、とてもワクワクします。読んだことのない人は、絶対に損をしていると思います、アニメ化までされているこの本にハズレなしです。
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『君の膵臓をたべたい』
住野よる(双葉社)
高校生の男女の物語。ある日の病院で、地味で目立たない「僕」が拾ったのは、クラスのマドンナ的存在「桜良」のものでした。それにより、「僕」は彼女の秘密を知ることになる…。最初からわかっている結末のはずなのに、話の進み方は突拍子もなくて、全く読めない展開に、ページをめくる手が止まりませんでした。デビュー作とは思えない程よくできた本だと思います。一見グロテスクな題名ですが、最後まで読むと、涙と優しさに包まれる作品です。
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『アルジャーノンに花束を』
ダニエル・キイス 小尾芙佐:訳(ハヤカワ文庫)
知的障害を持つ男性が主人公であるこの話は心に深く突き刺さるものがあり、とても印象的でした。自分が他人に馬鹿にされているとも気付かず、仕事場でもうまくいかず…。そんな彼が夢見たのは、賢くなった自分の姿でした。彼の心境の変化と、実験用マウス「アルジャーノン」との出会いが、本作品を読み終えた後の涙となってあふれます。
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福田さんmini interview

どんなジャンルでも読みますが、その中でもファンタジーや青春小説はよく読みます。刑事物等はあまり読まないです。

猫と出合い、不思議な島で旅をする『エルマーのぼうけん』は保育園時代から好きでした。絵本では『つきのぼうや』をよく読みました。小4くらいからは、『なんでも魔女商会』シリーズに、小6では『動物と話せる少女リリアーネ』シリーズが特に好きでした。

『また、同じ夢を見ていた』(住野よる:著)
自分の人生について、幸せについて考え、気付く機会をくれました。主人公たちの頑張りや心境の変化に胸を打たれたし、読んでいて心地よかったです。文章のすべてが話し言葉で読みやすく、感情移入、共感がしやすいと思いました。終盤あたりの友人との別れが印象に残りました。

先が全く読めない、ぶっ飛んだ内容のファンタジーが読みたいです。他には、世界の野鳥について、写真付きで詳しく説明している本が読みたいです。