高校ビブリオバトル2016
なぜつけ麺を出したのか。ラーメン店主の人生とラーメン哲学
『東池袋大勝軒 心の味』山岸一雄
Y.Yさん(東京都・本郷高校2年)

ラーメンの相棒のような存在、「つけ麺」。そのつけ麵をつくった山岸一雄さんの書いた本を紹介します。ここには、山岸さんが人生で経験したこと、ラーメンをつくるときの山岸さんなりの考え方、弟子を教育するときの教育論などが書かれています。
山岸さんには、妹が一人、軍人であるお父さん、病弱であるお母さんがいました。しかし、山岸さんが8歳の時に、太平洋戦争でお父さんが死んでしまいます。お母さんは病弱、妹はまだ幼かったので、山岸さんは高校進学をあきらめ上京して働くことになります。この時はまだラーメン屋で働くことは考えていませんでした。
ラーメン屋で働くことになったのは17歳の時、「兄貴」と慕っていた、いとこから「一緒にラーメン屋をやらないか」と誘われたことからでした。それから中野で一緒にラーメン屋、大勝軒を手伝うことになりました。
その後いとこは違う場所で独立し、山岸さんは中野の大勝軒を続けることになったのですが、その時につけ麺というメニューを出したのです。しかし、つけ麺を出すことについて、一番信頼していた「兄貴」や周囲の人から「そんな手間のかかることをやるな」と反対されます。でも山岸さんはその反対を押し切ってつけ麺をメニューにしました。どうしてでしょうか。それは読んで知っていただければと思います。そうこうしているうちに店舗を東池袋に移転し、今の大勝軒となりました。
ぼくがこの本を買ったのは、単純にラーメンが好きだからでした。でも、これを読んでみて山岸さんのラーメンに対する考え方から人生への教訓を学べる気がしました。例えば、山岸さんが東池袋で大勝軒を始めた頃、あるお客さんがラーメンを食べるためではなく山岸さんのまかないである弁当をもらおうとして来たといいます。普通そんな人が来たら断ると思うのですが、山岸さんはその人にお弁当をあげたのです。そしてその後、その人が一人前になったとき、何の対価も求めずにステンドグラスを貼ってくれたといいます。「他人に優しくすれば自分にも返ってくる」、まさにこのことだと思いました。
驚くべきことに、山岸さんは自分のレシピを雑誌に掲載します。ラーメン屋にとって、レシピは努力の結晶であって、そう簡単に他人に見せるものではありません。そのレシピをもとにつくったものを商品として売るんですから。ですが、山岸さんはそのレシピを簡単に教えてしまいます。それはいったいなぜでしょうか。1つは、自分の味を後世に残したかったからです。しかしそれだけでなく、まだ理由は2つほどあります。それは、読んで確かめてみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>
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『人生で大切なことはラーメン二郎に学んだ』
村上純(光文社新書)
二郎というラーメン屋から学ぶことがたくさんあります。店舗ごとの感想も書いてあります。ぜひこの本を読んでジロリアンになりませんか。
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Y.Yさんmini interview

随筆や評論文

高校受験の時、鷲田清一さんの『哲学の使い方』を読んだこと。

『To LOVEる』という漫画が気に入っていました。主人公がハーレム症候群という病気で、様々なトラブルに巻き込まれるというストーリーです。

『アメリカの戦争責任』(竹田恒泰)
第二次世界大戦など日本の歴史に興味を持ち、日本史を学ぶことになりました。

『ぬらりひょんの孫』(ジャンプコミックス)
椎橋寛による妖怪漫画

湊かなえのミステリー